甲府盆地をジオパークに!その地質的「魅力」をご紹介

2022年3月10日

実は甲府盆地は3つのプレートがせめぎあう地質学的にも珍しい場所。その地勢ゆえ、山梨の地形は標高100メートルから3,700メートル以上、暖帯から寒帯までに及ぶまさに地球の縮図のよう。

その個性のおかげで甲府盆地を取り囲むように世界文化遺産(富士山)、3つの国立公園(富士箱根伊豆、南アルプス、奥秩父)、国定公園(八ヶ岳)、2つのユネスコエコパーク(南アルプス、奥秩父)が分布しています。

プレートに囲まれた甲府盆地はそれだけの奇跡なのでしょうか。

今回はそんな甲府盆地とその周辺地形についてご紹介します。

google mapより

3つのプレートがひしめきあう甲府盆地

甲府盆地は、北縁は関東山地、南縁にフォッサマグナの一部(御坂山地)、西縁は南アルプスで囲まれた盆地。

3つのプレート(ユーラシアプレート、北アメリカプレート、フィリピン海プレート)がせめぎ合う、世界的にも珍しい場所。このような複数のプレートが重なり合う場所は世界的にもまれで、2019年4月に放送されたブラタモリでも『ミラクル盆地』と紹介されました。⇒ブラタモリ『#130 甲府盆地「ミラクル盆地は試練がいっぱい~」2019年4月13日放送

総理府 地震調査研究推進本部(https://www.jishin.go.jp/main/yosan/suihon/plate.htm)より引用

甲府盆地を取り囲む特殊な地形、登録遺産など

温泉〜8つの泉質が味わえる

天然温泉にいけば一度は目にしたことがある田中収先生の温泉解説パネル。田中先生は大月短期大名誉教授(地質学)で、山梨県内で40カ所以上の温泉開発に関わられています。

毎日新聞『多様な泉質育む地質 大月短大・田中収名誉教授/山梨』

高校時代に廣瀬が出会った先生の著書(『山梨県 地学のガイド』コロナ社)によると「甲府盆地の地下には広い範囲で不透水層が広がっており、そのため大きな地下水湖が存在し、鰍沢禹の瀬の天然ダムから富士川へ放流されている」とのこと。

「地下水湖最深部には化石水と呼んでいいような数百年、数千年前の雨水が蓄えられて、それが深層熱水的温泉として利用されている」といいます。

そのため、山梨の温泉では8つの異なる泉質が楽しめます。それは、4つのプレートのダイナミクスと、フォッサマグナ・中央構造線といった大断層が生み出す温泉環境、まさに地球の恩恵です。

『山梨県地学のガイド』(コロナ社)は、廣瀬が高校時代からの愛読書。今も大切にしています

八ヶ岳〜国定公園

八ヶ岳は山梨県と長野県にまたがる火山。かつては現在の中岳(赤岳と阿弥陀岳の間)付近が高く、その標高は3,400mほどだったと推定されています。

その後25万~10万年前くらいに日本最大級の山体崩壊。その岩屑なだれが甲府盆地まで達し、それが甲府盆地を平坦にしたという説もあります。

韮崎などの地元には今も「八ヶ岳は富士山にげんこつされて(または、蹴り飛ばされて)低くなった」という伝承が残されています。

富士山〜世界文化遺産

富士山周辺地域は「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」としてユネスコ世界文化遺産に登録されています。古来よりつづく富士信仰、浮世絵など国内の芸術において重要なテーマ、題材であったことが登録理由となりました。

構成資産の登録対象は25件、富士山域や浅間神社、河口湖などが含まれます。

富士山の内部構造図

(出典:中部地方整備局富士砂防事務所ホームページ、当該ページの URL:https://www.cbr.mlit.go.jp/fujisabo/oshirase/fujiazami/fujiazami_57/fa57-1.html)

南アルプス〜ユネスコエコパーク、環境省国立公園

南アルプス(赤石山脈)は、山梨、長野、静岡にまたがる山地で、「南アルプスユネスコエコパーク」「環境省南アルプス国立公園」、山梨県側は「南アルプス巨摩県立自然公園」に指定されています。

南アルプスには日本第2峰の北岳があり、さらに9つもの3,000m峰があり、日本のアルピニズムの形成にも深く関わってきました。

どうしてユネスコエコパークに登録されたの?

南アルプスは国内屈指の高山環境で、そこには固有種が生息する点、またそのふもとでは山岳信仰や民俗芸能、食文化などの固有の地域文化が形成されてきた点が評価されて登録に至りました。

南アルプスの中でも北岳周辺にだけ自生するキタダケソウ

甲武信ヶ岳周辺地域〜ユネスコエコパーク

甲武信ヶ岳周辺地域は生物圏保存地域エコパークに登録されています。

甲武信ケ岳(2475m)を中心とした山梨、埼玉、東京、長野の4都県にまたがるこの地域は奥秩父と呼ばれ、千曲川、荒川、笛吹川、多摩川など大きな河川の水源です。また、絶滅危惧種のチョウなど希少な生き物が生息している点が登録の理由となりました。また山梨県を中心にブドウやモモなどの農業活動も登録理由に挙げています。

ブドウ畑

このように見てくると、世界文化遺産(富士山)、3つの国立公園(富士箱根伊豆、南アルプス、奥秩父)、1つの国定公園(八ヶ岳)、2つのユネスコエコパーク(南アルプス、奥秩父)が甲府盆地を取り囲むように分布していることがわかります。

今山梨県で保全の指定に取り残されたのは甲府盆地だけ!器を愛でる日本人がなぜ日本最大級のハート型甲府盆地にどのようなまちを盛り付けていくか、話題にしないのでしょうか?甲府盆地は丸ごとパワースポット。ジオパークに登録することで、甲府盆地の環境を守る心が育っていきます。そして、甲府盆地がジオパークに登録される資格は十分あるように感じます。

ジオパークとは?

ジオパーク(geopark)とは、地質的に地球科学的に特有の価値を持つ地域を保全し、教育や観光活用など持続可能な開発を進めるプログラムです。

ジオパークに認定されると、そのジオパークで見どころとなる場所を決め(ジオサイト)、将来持続的に観光資源や保全対象として魅力の発信、持続利用できるよう官民協働の保護・保全が可能となります。

ジオパークには2種類、世界ジオパーク日本ジオパークがあります。

世界ジオパーク

世界ジオパークはエコパークと同じく国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)により登録され、保全、教育、ジオツーリズムを目的としています。登録地域は以下です。

洞爺湖、有珠山、アポイ岳、糸魚川、隠岐、山陰海岸、室戸、島原半島、阿蘇、伊豆半島

日本ジオパーク

日本ジオパーク委員会が認定します。登録地域は以下です。

白滝、三笠、とかち鹿追、下北、八峰白神、男鹿半島・大潟、三陸、鳥海山・飛島、ゆざわ、栗駒山麓、佐渡、磐梯山、苗場山麓、立山黒部、浅間山北麓、白山手取川、下仁田、恐竜渓谷ふくい勝山、筑波山地域、秩父、南アルプス、銚子、箱根、伊豆大島、Mine秋吉台、おおいた姫島、南紀熊野、四国西予、おおいた豊後大野、天草、霧島、桜島・錦江湾、三島村・鬼界カルデラ、島根半島・宍道湖中海、萩

(出典:日本ジオパークネットワーク公式ページ)

甲府盆地を日本ジオパークに登録しよう!

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