
令和6年12月の甲府市議会定例会にて、廣瀬は『はじめの100ヶ月の育ちのビジョン』について甲府市議会にて質問しました。その質疑応答も交えて、なぜ今『はじめの100ヶ月』なのか?どんな課題を解決しようとするのか?解説します。
なお、議会の質疑応答の様子は以下から動画でご覧いただけます。
この記事の目次
なぜ『はじめの100か月』か?
『はじめの100か月』とは、妊娠から小学校1年までのライフステージを指します。
この期間は、子どもの健やかな身体的な成長はもとより、日々、自然環境、生活環境に触れ、人の気持ちに触れ、精神的・感情的な成長を遂げる期間でもあります。
また、幼児教育で最近注目されつつある「非認知能力」が培われるのもこの時期です。
だからこそ、子どもが人生の最初の一歩を健やかに踏み出せるよう、社会全体で支えて応援していくことが大切です。
そんな背景があり、令和5年12月に「はじめの100か月の育ちビジョン」が閣議決定されました。

『はじめの100か月の育ちビジョン』の背景や関係する法律
『はじめの100か月の育ちビジョン』を説明する前に、関係する条約や法律、組織を簡単にご説明します。これにより、このビジョンが短期的な企画ではなく、長期的に取り組んでいく国の方針であることが分かります。
子どもの権利条約
子どもの権利条約は1989年11月に国連総会で採択された国際条約です。
日本は1990年9月に世界で109番目の国としてこの条約に署名し、1994年に158番目の批准・締約国となりました。現在は、締約国・地域は196となっています。
ちなみに「条約」とは国際間、国家間で文書により取り決められる合意です。その効力は明文規定はないものの、日本では条約が法律より優位な効力として認めています。
こども基本法
こども基本法は令和5年4月に発効され、日本国憲法及び子どもの権利条約の「こどもの意見の尊重」など4つの基本原則を取り入れ積極的に推進することを規定しています。
あえて、ひらがなで「こども」と表記されたのは、18歳や20歳といった年齢で区切るのではなく、全ての子どもに必要なサポートが途切れないよう、「心と身体(からだ)の発達過程にある者」を表現しているためです。
こども大綱
こども大綱は、少子化社会対策/子ども若者育成支援/子どもの貧困対策の既存の3法律を一体的に束ね、こども施策に関する基本的な方針や重要事項等を一元的に定めたものです。
こども家庭庁・こどもまんなか社会
こども家庭庁は、こども政策の新たな推進体制に関する基本方針(令和3年12月21日閣議決定)に基づいて、令和5年4月に設置された組織です。様々な少子化対策(児童手当の改善、大学無償化など)やこども未来戦略の施策を進め、その内容はしばしばニュースにもなりました。詳しくは、以前の記事もご覧ください。
「こども家庭庁、はじまる〜『待ち受け型』から『プッシュ型・アウトリーチ型(おせっかい型)』へ」(ひろせ集一公式HP)
そんなこども家庭庁は、大人が中心になって作ってきた社会を「こどもまんなか」社会へと創り変えていくための司令塔の役割を持ちます。
「こどもまんなか」社会とは、こどもの視点に立って意見を聴き、こどもにとっていちばんの利益を考え、こどもと家庭の、福祉や健康の向上を支援し、こどもの権利を守る社会。そうして、こどもが健やかに成長でき、子どもが希望を叶えたり自分の能力を活かせる社会です。
そのような法律や組織制定の背景を経て、『はじめの100か月の育ちビジョン』が今後の子育てのスタンダードになろうとしています。
『はじめの100か月の育ちビジョン』について
以下がこども家庭庁が公開しているパンフレットです。その一部を以下に転載します。




このビジョンによる「はじめの100か月は生涯の幸せを育てる」という言葉に、『子育ち』の原点が集約されているように思われます。
妊娠期から小学校1年生までがだいたい100か月。この時期に、こどもは様々な人やモノ、環境とのはじめての出会いを繰り返しながら育っていきます。こどもは、おとなのとの「アタッチメント(愛着)」すなわち「安心」を土台として、「遊びと体験」すなわち「挑戦」を繰り返しながら成長していきます。
だからこそ、私たちはこどもが人生の第一歩を力強く踏み出せるよう社会全体で支え、応援していくことが必要だとしています。こどもがまんなかの社会を実現することは、すべての人の幸せ(ウェルビーイング)にもつながっていきます。
こどもの成長に応じた環境の変化には様々な育ちの危機が訪れるので、育ちの「切れ目」を生まないように「こどもの誕生前」から全ての関係者で連携して育ちを支えることが重要なのです。
『はじめの100か月の育ちビジョン』で解決が望まれること
『はじめの100か月の育ちビジョン』で解決が望まれることについて、廣瀬は2点指摘しています。
1点は、出産後の家庭がいかにして地域と繋がるか。2点目は、就学時にいかにして地域と繋がるかです。
以下の包括的イメージ図に記入したとおり、産後と就学時に支援の「切れ目」があります。この支援の切れ目は、『幼保』と『小学校』の間にある、子どもにとっての、そして親にとっての切れ目であると、こども園の運営に長く関わってきた廣瀬は感じています。
この切れ目について今回の代表質問でも質問したところです。この切れ目を繋ぐのが、Q3の乳児家庭全戸訪問事業、Q4.のこども誰でも通園事業、Q7 幼児教育/小学校教育の接続について(幼保小の架け橋プログラムについて)です。
出典:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_seisaku_suishin/pdf/r5_yosanan_point.pdf
このような切れ目があると、幼保期にその子の課題を保育士や職員などの大人が把握していても、それが小学校へ十分に引き継がれないなどの弊害が生まれているのが現状です。「こんなことができた」「こんなことが得意だ」という子ども一人一人の成長に関わる情報を保育士さんたちは持っていても、小学校側は「この子どもの課題はなんですか?」という視点になり、認識に違いがある印象を受けます(これについては動画の41:31あたりで触れています)。
幼児期は遊びを通して小学校以降の学習の基盤を培う時期、小学校はその芽生えを伸ばしていく時期。5歳児から小学校1年生の2年間は「架け橋期」と称され、幼児教育の大事な期間と捉えられています。
ところが現実は、幼児教育と小学校教育の引き継ぎにギャップがあると廣瀬は認識しています。もちろん幼保も幼稚園、保育園、こども園など異なる教育視点を持っていますから、小学校へ円滑な接続を図ることは容易ではありません。
文部科学省は令和4年度から「幼保小の架け橋プログラム」をまずはモデル地域で実践的に推進しています。これは幼稚園教育要領や保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領に記載され、小学校入学前までに育ってほしい子どもの姿や能力を10の項目にまとめた「望ましい10の姿」を引き継げるプログラムとして開始されたプログラムです。幼児教育施設では「主体的・対話的で深い学び」に向けた資質・能力を育み、小学校においては「幼児教育施設で育まれた資質・能力」を踏まえて教育活動を実施することとしています。
質問で廣瀬は、甲府市らしさを取り入れた「架け橋期のカリキュラム」を教育委員会/教育部主宰のもとに話し合う会議を設置して、「幼保小の架け橋プログラム」を推進することを提案し、具体的にどのように対応されるのかお尋ねしました。
市からの回答では、
令和7年度に、教育委員会と幼稚園、保育所小学校地域住民、当該プログラムについて話し合いの場を設置して、カリキュラムを作成して取り組みを進めていきたい、
といただきいました。詳しくは以下の「A 幼保小の架け橋プログラムについて」をご覧下さい。
また、4・5歳児童対象の歯科健診についても、ネグレクトなどの虐待に対する配慮は図られているか質問しました。課題のあるお子さんを見つけ、行政対応としてきちんと引き継がれる体制が作られる質問しました。
その回答では、万一、ネグレクト等の虐待が疑われた場合には、未然防止・早期発見に繋げられるよう、関係部署と連携し、対応することとしているとのことでした。
家庭での問題。育ちの問題。なぜ子どもの発達がうまくいっていないのか?それはそもそも子どもの問題なのか、家庭の養育の問題なのか、そんな根深い課題に答えと解決を導く仕組みづくりが進められていると言えます。
甲府市のこれからの取り組み(議会の質疑応答より)
もともと、評価の高い『甲府』の子育て環境。
NPOエガリテ大手前さんによる「第19回 次世代育成環境ランキング 2023」(2024年5月発表)では、甲府市は全国62中核市の中で総合順位1位になりました。具体的には『小児医療』で1位、『児童福祉』で2位、『児童養護』で3位でした(以下の記事で詳しく解説しています)。
そんな甲府でも上で述べた課題があります。今回、そんな課題も踏まえつつ、ライフステージに沿って、こどもの育ちについて、甲府市議会で質問したので、その回答も併せてご紹介します。
Q1 誕生前の妊娠期について
「特定妊婦」の話題が頻繁に取り上げられるようになっています。「特定妊婦」とは、若年妊娠や予期せぬ妊娠、貧困といった事情があり出産前から支援を必要とする妊婦のことです。2024年の改正児童福祉法により「妊産婦等生活援助事業」が始まり、妊娠期から産後にかけて住まいや食事の提供、養育を支える拠点の整備を全国で進めています。本年6月から市内の社会福祉法人が妊産婦を受け入れ、暮らしをともにしながら将来設計をつくっていく伴走型支援施設を開設しました。
質問いたします。支援施設では予期せぬ妊娠や出産などに悩み、住む場所がなく支援が必要な妊産婦を市町村などを通じて受け入れているとのことですが、甲府市は「妊産婦等生活援助事業」をどのように進め、また支援施設とどのような連携を取りながら、「特定妊婦」の伴走型支援を行っていくのかお尋ねします。
(留意点) 甲府の支援施設の事業は、全国でも最先端の取組である。
A 特定妊婦について
本市におきましては、妊娠届出時の面談により、経済的問題や妊娠葛藤があるなどの社会的ハイリスク状況を把握した場合には、母子保健と児童福祉の職員が連携して行う合同ケース会議により、特定妊婦の選定やその後の支援方針等について検討し、マイ保健師と子ども・青少年総合相談支援センター「おひさま」の相談員が連携して家庭訪問を行うなど、継続的な支援を行っております。
こうした中、本年4月施行の改正児童福祉法により制度化された妊産婦等生活援助事業は、家庭生活に困難を抱える妊婦と出産後の母子等に対する支援の強化として、一時的な住まいや食事の提供、その後の養育等に係る相談・助言等を行うものであり、特定妊婦の中でも特に支援を必要とする方が対象となるため、広域的な受入れによる安定的な運営の必要性があることから、事業の実施については山梨県に要望してまいりたいと考えております。
なお、市内の社会福祉法人が民間の財団の補助を受けながら、この事業と同様の目的で住む場所がない特定妊婦に対する支援を開始したことは先進的な取組であり、引き続き、当該社会福祉法人と連携を図ってまいります。
Q2. 新生児先天性代謝異常等検査について
山梨県は本年11月生後間もない全ての新生児から採血し、希少疾患の有無を調べる「新生児 先天性代謝異常等 検査」で、新たに20疾患から二つの疾患を対象に加え22疾患とすることを発表しました。本事業は母子保健法の精神にのっとり、実施主体が都道府県と指定都市となっており、山梨県が実施していますが、採血料以外の自己負担はありません。異常の発見頻度は、最も高いクレアチン症でも3,000~3,500人に一人程度とされており、対象疾患児を見逃すこと無く発見することを要求されています。課題は、「精度保証」「追跡調査」「倫理的課題」などが挙げられています。
質問いたします。この検査により疾患が発見された新生児やその保護者に対し、甲府市としてどのようなサポートをされているのか、お聞かせください。
A 先天性代謝異常等検査後のフォローについて
先天性代謝異常等検査は、新生児を対象に代謝異常疾患などを発症前に発見して、治療を早期に開始することにより障がいの発症を予防することを目的として、山梨県が実施している検査になります。
検査結果は医療機関を通じて保護者へ連絡されますが、本市におきましては、精密検査となった場合、まずは、マイ保健師が保護者の気持ちに寄り添い、心理的負担の軽減に努めております。また、疾患が判明した際には治療が長期間に及ぶため、保護者との信頼関係を構築し、治療に関する不安への相談とともに、継続した治療に向けてきめ細やかなサポートをしております。
今後も、山梨県や医療機関等と連携する中で、切れ目のない、寄り添った支援に努めてまいります。
Q3.「乳児家庭全戸訪問事業」(こんにちは赤ちゃん事業)について
生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問する、「乳児家庭全戸訪問事業」(こんにちは赤ちゃん事業)についてお伺いします。様々な不安や悩みを聞き、子育て支援に関する情報提供等を行うとともに、親子の心身の状況や養育環境等の把握や助言を行い、支援が必要な家庭に対しては適切なサービスを提供し、乳児のいる家庭と地域社会を繋ぐ最初の機会とすることにより、乳児家庭の孤立化を防ぎ、乳児の健全な育成環境を図るとしています。
質問いたします。甲府市における訪問者の職種と担当エリアと担当する概略人数及び令和5年度の訪問実績をお尋ねいたします。また、支援が必要な家庭へのサービス提供状況をお訊ねします。
(再質問) 乳児家庭全戸訪問事業の要項では、訪問者について保健師、助産師、看護師のほか、保育士、母子保健推進員、愛育班員、児童委員、母親クラブ、子育て経験者等から幅広く人材を発掘できるとされており、その他として甲府の地域子育て資源である子育て支援センター職員、その他子育て施設(保育所、認定こども園等)職員等の参加を求め、地域担当の保健師さんの負担を軽減していくとともに、手厚い支援を実現することにより、家庭と地域を繋げていく力強い事業となっていくのではないかと考えます。地域の様々な関係者と協働しながら、子育て家庭と地域の資源を結び付けることを提案しますが、あらためて甲府市の実施体制を伺います。
A 乳児家庭全戸訪問事業について
本市における乳児家庭全戸訪問事業は、国のガイドラインにより、母子保健法に基づく乳児に関する訪問指導と一体的に実施しております。
この訪問事業は、産後鬱への早期支援や3か月整形外科健康診査へのつなぎ等を考慮し、生後2か月前後を目安に、医療的な視点で支援できる助産師等16名を市内全域に割り振って実施しており、リスクを把握している家庭への訪問や里帰り出産、来庁面談、長期入院等で対象とならないケースを除き、令和5年度の実績は742件となっております。
支援としましては、おおむね1時間の滞在時間の中で乳児の発育・発達の確認や母親の心配事や困り事への対応と、母子保健事業や子育て支援事業などの情報提供をしております。
なお、養育環境にリスクを抱えると判断した場合は、マイ保健師が支援を継続する中で、必要に応じて子ども・青少年総合相談支援センター「おひさま」と合同による訪問のほか、関係機関と連携した丁寧な支援を行っております。
Q4.「こども誰でも通園制度」について
0歳6か月から満3歳未満児を対象に、今年度から「こども誰でも通園制度」の試行的事業が、甲府市ではじまりました。改正児童福祉法の「乳児等通園支援事業」に基づいた「子ども・子育て支援法」等の改正による制度です。一時預り事業と大変似通っていますが、一時預り事業は保護者の都合で育児が出来ないとき利用できますが、こども誰でも通園制度はこどもの育てられる権利として事業化されたものです。全国では118自治体が実施をしており、山梨県では甲府市が事業を開始しました。
質問いたします。甲府市における実施施設数と試行的に実施を開始するにあたり、どのような課題があったのかお尋ねします。また本年度の試行事業の結果をどのようにまとめ、令和7年度の2年目の試行事業に繋げていくのか。さらに令和8年度の本格的実施に向け制度設計はどのようになるのかお尋ねします。
(留意点) 令和7年度からは「地域子ども・子育て支援事業」として実施するため、自治体で条例改正を行い、施設では認可手続きと定款変更が必要となる。
A 私からはこども誰でも通園制度について
(樋口雄一市長)私は、市長就任以来、本市の全ての子どもたちは次代を担う宝であり、ふるさと甲府で豊かな人間性や創造性を育みながら大きな夢を抱き、健やかに成長してほしいとの想いを原動力に、多種多様な子ども・子育て施策に取り組んできたところであります。
こうした中、国におきましては、保護者の就労要件にかかわらず、ゼロ歳6か月から2歳までの未就園児が保育施設等を一定時間利用できるこども誰でも通園制度について、令和6年度に試行的事業を実施し、令和7年度には地域子ども・子育て支援事業として実施自治体の増加を図った上で、令和8年度から子ども・子育て支援法に基づく新たな給付として全国の自治体において本格実施することにしております。
本市では、子育ち応援と子育て支援を両輪とする子ども・子育て政策をさらに推進させるとともに、事業者や保護者のニーズをいち早く把握することで本格実施への移行がスムーズになると考え、試行的事業を県内自治体に先駆けて実施しているところであります。試行的事業の実施に当たりましては、事業者の受入れ負担の軽減に向けた実施方法や地域でバランスの取れた実施施設の選定などが制度設計において課題であったことから、事業の趣旨に御賛同いただいた施設と協議を行い、本年7月から市内の保育所、幼稚園、認定こども園など22施設の協力により実施しており、令和6年11月末時点において延べ133名の方に御利用いただいております。
また、試行的事業におきましては、利用者や事業者の声などを聴取することとされており、アンケート調査を実施する中で、利用者からは「家族以外の子どもと触れ合って刺激を受けている。」といった御意見や、事業者からは「ふだん通所していない家庭からの育児相談を一緒に考えることで保育士の成長につながっている。」といった好評の御意見をいただいております。
一方、利用する際の手続の簡素化や利用上限時間の拡充などの制度的な課題につきましては、国へ報告するとともに、制度の認知から実際の利用につなげるアプローチなどの本市で対応できる課題につきましては、令和8年度の本格実施に向けて改善をしていきたいと考えております。
今後におきましても、引き続き、各保育施設等と連携し、子どもを中心に、子どもの成長から良質な生育環境の整備を図るとともに、育児に関する心理的負担の軽減による子育て家庭への支援につなげ、本市が目指すこども育むまちの実現に向け、鋭意取り組んでまいります。
Q5、6 集団健康診査(集団健診)について
甲府市の集団健診には、3か月児整形外科健診、1歳6か月健診、2歳児歯科健診、3歳児健診、そして国民健康保険加入者の4・5歳児童対象の歯科健診、就学時健診があります。甲府市で行われている国民健康保険に加入している4・5歳児童対象の歯科健診は平成18年度からはじまり、保育所/認定こども園や幼稚園で行う虫歯予防に加え、食べ物を噛んで飲み込む動作や言葉の発音など口腔機能全般を視野に入れた全身の健康づくりの為の健診とされています。一方令和5年12月国会で、「母子保健医療対策総合支援事業」に関する補正予算が可決され、その中に「5歳児健診」の創設が含まれました。令和5年12月8日付で各自治体宛にこども家庭庁成育局から「通知」が発出され、実施要項や必要な健康診査問診票についても「事務連絡」として送付されています。2024年3月には、「5歳児健康診査マニュアル」が作成されています。5歳という年齢は、言語理解や社会性が発達する時期であり、発達障害が顕在化しやすい時期といえます。この時期に健診を行うことで、子どもたちの特性を早期に発見し、適切な支援に繋げることが可能です。
質問いたします。甲府市における4・5歳児童対象の歯科健診は、続く就学時健診も行われていますが、あらためてどのような経緯と目的ではじめられたのでしょうか。また、この健診によるネグレクトなどの虐待に対する配慮は図られているのでしょうか。
合わせて、「母子保健医療対策総合支援事業」に関する中の「5歳児健診」について、国は2028年度までに全国どこでも受けられる体制を目指していますが、甲府市の今後の実施についての対応を伺います。
(留意点)山梨市おける5歳児健診の取組みの紹介 : 合併時の平成17年から5歳児健診を開始し、発達障害を持つこどもの早期発見と適切な支援を目的に実施しています。健診は集団形式で行い、問診・医師による診察・相談を全員に実施しています。事前カンファレンスでは過去の支援経過を共有し、診断の中で発達や集団生活の中での心配事を確認しています。事後カンファレンスでは健診結果を共有し、必要な支援方針を検討し市のフォローアップ体制を構築しています。
(再質問) 具体的に開始年度、実施形式、実施回数、1回の健診人数や参加していただける医師をはじめとするスタッフの職種などを確認する。
A 国民健康保険の4・5歳児歯科健診について
国民健康保険の歯科健診につきましては、保険者における保健事業活動として、被保険者の健康管理及び増進と財政健全化の推進を図ることを目的に昭和60年度から始まり、その後の変遷を経て、平成18年度には乳幼児健診と就学時健診のはざまとなる4・5歳児を対象とする歯科健診を開始したところであります。
幼児期の4・5歳という年齢は、乳歯が生えそろい、歯磨きや食習慣などの基本的な歯科保健習慣を身につける最適な時期とされておりますことから、本健診では歯に関する健診に加え、全身の健康づくりを視野に入れた口腔機能全般の健診を実施しております。
また、万一、ネグレクト等の虐待が疑われた場合には、未然防止・早期発見につなげられるよう、関係部署と連携し対応することとしております。
A 5歳児健康診査について
5歳児健康診査は、国の母子保健医療対策総合支援事業に位置づけられ、子どもの特性を早期に発見し、特性にあわせた適切な支援を行うとともに、生活習慣、その他育児に関する指導を行い、幼児の健康の保持及び増進を図ることを目的としています。
5歳児健康診査を実施していく上では、個人の成長や発達を医師が診察するだけでなく、集団における立ち振る舞いや社会的な発達の状況を評価する多職種によるカンファレンスなどが重要であることから、他の健康診査よりも1人当たりの所要時間が長くなる見通しとなり、実施体制の検討は十分に行っていく必要があると考えております。また、特性にあわせた適切な支援の継続や就学へのつなぎを行うためには、関係機関と支援体制を整えていくことが重要であると考えております。
こうした中、本年11月には、効果的な母子保健事業の推進について協議する甲府市母子保健推進会議を開催し、現在、乳幼児健診に御協力いただいている市内小児科の医師の方々と課題の共有を図ったところであります。
今後につきましても、課題への対応について関係機関と検討してまいります。
Q7. 幼児教育/小学校教育の接続について(幼保小の架け橋プログラムについて)
幼児期は遊びを通して小学校以降の学習の基盤となる芽生えを培う時期であり、小学校においてはその芽生えをさらに伸ばしていくことが必要とされています。一方、幼児教育と小学校教育は、他の学校段階間の接続に比してさまざまな違いを有しており、円滑な接続を図ることは容易でないため、5歳児から小学校1年生の2年間を「架け橋期」と称して焦点を当てています。
この為に、幼稚園、保育所、認定こども園、小学校が意識的に協働して「架け橋期」の教育を充実させるために、幼児教育施設では「主体的・対話的で深い学び」に向けた資質・能力を育み、小学校においては「幼児教育施設で育まれた資質・能力」を踏まえて教育活動を実施することとしています。このために、幼児教育施設では「アプローチカリキュラム」を、小学校では「スタートカリキュラム」を策定し、「架け橋期のカリキュラム」の作成を推進しています。
質問いたします。甲府市らしさを取り入れた「架け橋期のカリキュラム」を作成することにより、子どもたちにとって幼児教育と小学校教育は円滑に接続されていくのではないかと推測できます。甲府らしさを教育に取り入れるためにも教育委員会/教育部主宰のもとに架け橋期のプログラムについて話し合う会議を設置して、「幼保小の架け橋プログラム」を推進することを提案しますが、どのように対応されるのかお尋ねいたします。
(再質問)文部科学省では「幼保小の架け橋プログラム」について、令和4年度からの3年間、架け橋期のカリキュラムの開発や実施等に取り組む19の自治体を採択しています。採択された自治体における取組状況や成果等に関する情報提供はなされているのか質問いたします。また、令和7年度甲府市予算に会議設置の予算要求は行っているのかとお聞きしたいところですが、是非予算を確保して架け橋プログラムを推進していただきたいと要望いたします。
A 幼保小の架け橋プログラムについて
文部科学省においては、5歳児から小学校1年生までの2年間を架け橋期とし、幼児教育と小学校教育の円滑な接続による教育の充実を図るため、幼稚園や保育所、小学校、保護者、地域住民など、子どもに関わる大人の連携・協働による幼保小の架け橋プログラムの実施を推進しております。
本市においては、平成28年度から平成29年度までにかけて、貢川小学校が山梨県教育委員会の幼児教育振興事業実践校として幼保小の連携・交流を進め、今年度も学区の幼稚園や小学校等の職員が、幼稚園等や小学校で実施するカリキュラムなどを基に今後の指導につなげるとともに情報共有を図っており、他の学区においても相互に参観等を行い、それぞれの取組の内容を確認しているところであります。
こうした中、山梨県教育委員会においては、本年度策定した山梨県教育大綱において、幼保小の架け橋プログラムに基づいた幼児教育と小学校教育との円滑な接続に向けた指導者間の交流や指導力向上に向けた取組を推進するとしております。
今後におきましては、国や山梨県の指導・助言等を基に、本市教育委員会と関係部署とが連携し、幼稚園や保育所、小学校、保護者、地域住民等による当該プログラムについて話し合う会議を設置する中で、架け橋期のカリキュラムの作成に向け、取組を進めてまいります。
Q8. 甲府市こども家庭センターについて
2022年に改正された児童福祉法に基づき、2024年度から新しいこども福祉の拠点「こども家庭センター」が全国の市町村に努力義務ですが設置されつつあります。甲府市においてはいち早く「子ども・青少年総合相談センターおひさま(子ども家庭総合支援拠点)」が担う児童福祉機能と、「子育て世代包括支援センター」が担う母子保健機能が連携した、全ての妊産婦、子育て世帯、こどもに対し一体的に相談支援を行う機関として今年度4月より運用が開始されました。
質問いたします。あらためて「こども家庭センター」の役割や機能、支援体制、他団体との連携などについて、お訊ねをいたします。また、今年度半期の実績をお訊ねいたします。
A こども家庭センターについて
こども家庭センターは、全ての妊産婦、子育て世帯、子どもを対象とした相談支援を一体的な組織として実施することにより、母子保健と児童福祉の連携・協働を深め、妊産婦及び乳幼児の健康に関することから子育てに困難を抱える家庭の課題まで、切れ目なく、漏れなく対応することを目的とするものであります。
本市におきましては、この4月から子ども未来部全体をこども家庭センターとして位置づける中で、南庁舎の母子保健機能と本庁舎の児童福祉機能が一体となり、様々な支援メニューにつないでおります。
こうした中、上半期におきましては、母子保健・児童福祉双方に配置した統括支援員を中心に、支援方針を検討する合同ケース会議を12回開催するとともに、児童相談所や児童養護施設等の関係者が情報交換と支援の協議を行う甲府市要保護児童対策地域協議会を5回開催したところであり、今後におきましても、公民の各関係機関・団体と連携し、具体的な支援を届けていくための中核的機能を担ってまいります。