想定外を無くす〜山梨で想定される地震の被害想定と対策

2023年9月4日

近い将来やってくると言われている「南海トラフ(巨大)地震」。被害規模が大きくなると予想される「糸魚川-静岡構造線断層帯」や「曽根丘陵断層帯」に起因する地震。

令和5年5月、山梨県は前回の地震被害想定調査(1996年)から約25年ぶりに、大規模地震10ケースでの最大被害想定をまとめました。

最新の地震の科学知見や課題、社会・地域条件を取り入れ、より現実的な被害想定となった今回の調査。「何をしたら地震災害の被害を軽減できるか」の視点から、具体的に県民が今できる防災対策も分かりやすく図解されていて、今後、自治体や市町村が防災対策を進める上での基本指針となります。

今回は、その結果を紹介し、地震に備えるために何をすべきか解説します。山梨県で想定される大規模地震である、「南海トラフ地震」「糸魚川-静岡構造線断層帯」「曽根丘陵断層帯」についても解説します。

南海トラフ地震とは?

南海トラフ地震とは、フィリピン海プレートとアムールプレートの境界の『沈み込み帯』で起こると考えられている巨大地震です。プレートの下に別のプレートが沈み込んでいくことで蓄積される「ひずみ」が、あるとき開放されて、その反動で地震が起こります。

南海トラフ巨大地震とも言われることがあり、時に超巨大地震となることもあるとされます。過去に発生した南海トラフ地震で分かっているものは以下となります。

Japan Meteorological Agency, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

たとえば1707年10月28日(今から316年前)に発生した宝永の大地震は、南海トラフのほぼ全域にわたって『一遍にばりっと壊れてズレたような(中略)超巨大地震』*となり、太平洋沿岸の広い範囲で最大25.7mの津波が発生しました。日本最大級の地震とされ、地震の49日後には富士山が噴火しました(宝永大噴火)。

*出典:日本の巨大地震と超巨大地震(https://www.toray-sf.or.jp/aboutus/pdf/57-h19_1.pdf)

歴史的に100〜200年(諸説あり)の周期で発生してきたと言われており、南海トラフ地震が発生する確率(マグニチュード8〜9クラスの地震が発生する確率)は、今後30年以内に70〜80%程度(2018年1月時点)と発表されています(確率算出の根拠となっている高知県室戸市の室津港の水深の観測について議論もあります)。

「糸魚川ー静岡構造線断層帯」「曽根丘陵断層帯」とは?

「糸魚川ー静岡構造線断層帯」とは、山梨県南部から長野県北部にかけて延びる活断層帯で、山梨県では北杜市、韮崎市、南アルプス市、甲斐市、市川三郷町、富士川町、早川町にまたがります。

「曽根丘陵(そねきゅうりょう)断層帯」とは、甲府盆地の南縁、曽根丘陵に沿って分布する活断層のことです。甲州市、笛吹市、甲府市、中央市、市川三郷町にまたがります。

「糸魚川ー静岡構造線断層帯」「曽根丘陵断層帯」による地震およびその他の県内で想定されうる地震の震源分布は以下です。

出典:山梨県地震被害想定調査
概要版(PDF)

このような背景にあって、山梨県は県内の地震被害想定調査結果を発表したということになります。

想定外を無くす〜山梨県の地震被害想定調査結果

最新の科学データに基づいて山梨県が地震被害想定の調査を行った結果が以下です。なお、南海トラフの地震では、「想定外をなくす」ため、M9クラスの巨大地震を想定して被害予測を行いました。また、曽根丘陵断層帯は以前のM6.1から新たにM7.3を想定して被害予測を行いました。

出典:山梨県地震被害想定調査(リーフレットPDF)

その結果、曽根丘陵断層帯による地震想定被害が、死者、負傷者、避難者、全壊建物数とも最も多いという結果となりました。具体的に被害が想定されるエリアマップは以下です。

出典:山梨県地震被害想定調査(リーフレットPDF)
出典:山梨県地震被害想定調査(リーフレットPDF)

以上のデータは山梨県のウェブサイトに基づくものです。詳しく正確に知るために、ぜひ以下の山梨県のページをご参考下さい。

地震に備えるために何をすべきか?

地震では、『耐震性の低い古い建物の耐震化』や『家具の固定』、『初期消火の向上』を行えば、死者数を大きく減らせると言います。たとえば、南海トラフ地震の場合、その防災効果を山梨県は以下のように想定しました。

出典:山梨県地震被害想定調査(リーフレットPDF)

この試算を念頭に、各家庭でできる防災対策を考えたいところです。家庭でできる防災対策も、山梨県が今回の被害想定調査でまとめていますので、参考してください。

出典:山梨県地震被害想定調査(リーフレットPDF)

また、地震発生時の『マイ・タイムライン』を事前に作っておくことも有効です。

マイ・タイムラインとは、自宅や周辺地域の危険性や避難先、防災情報の確認手段についてあらかじめ整理しておき、そのときの行動方針をシンプルにまとめた表のことです。

地震に限らず、台風や水害などの災害でも役立ちます。以下がマイ・タイムラインの例です(※甲府市洪水ハザードマップの場合となります。右側下段の④がマイ・タイムライン部分です)

「私の避難行動計画(マイ・タイムライン)」記入例(甲府市)より

マイ・タイムラインを作成する際に地域のハザードマップが必要になります。甲府市の地震ハザードマップは以下から確認することができます。

以上、『想定外を無くす〜山梨で想定される地震の被害想定と対策』でした。最新の山梨県地震被害想定を家族といっしょに知って、万が一のときに万全の備えをして想定外を無くしましょう。

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