こども家庭庁、はじまる〜『待ち受け型』から『プッシュ型・アウトリーチ型(おせっかい型)』へ

2022年11月28日

こども家庭庁が2023年4月に設置されます。ポイントは、『待ち受け型』から『プッシュ型・アウトリーチ型(おせっかい型)』。

こども家庭庁とは?

こども家庭庁は、子育てや子どもの養育・保護、児童虐待問題、少子化対策、いじめ対策、医療の提供体勢などを、府省を横断して素早く本質的な施策・対策、法的策定を進めるために、内閣府の外局として設置される組織です。

子どもが等しく健やかに成長できる社会にするため、子どもや子どものある家庭の福祉、保健の向上や子育て支援、子どもの権利利益の擁護に関する事務、関連する政策の実現を助けることが「こども家庭庁」の任務。

2022年6月、国会にて「こども家庭庁設置法」と「こども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」が成立し6月22日に公布されました。施行期日は来年2023年4月からで、こども家庭庁が設置されます。

こども家庭庁とは?
こども家庭庁とは?

どんな経緯で設立されるの?

児童虐待、貧困、イジメ、自殺など、子どもたちを取り巻く環境は近年ますます深刻となりつつあります。大人と違い、子どもはなかなか周囲に助けを求められなかったり、苦しさ・つらさを訴えたりできません。それゆえ、社会問題として認知されるのが遅れたとも言えますが、子どもにまつわる問題が放置されてきたのは、日本特有の現象でもあります。子どもの虐待やこどもの自殺率の高さは、もう待ったなしの対応が必要な状況です。

実際、痛ましいことに2020年は800人の子どもが自殺しています。我が国の子どもが、38か国中『身体的健康は1位だが精神的幸福度は37位』というユニセフの報告も出されています。

どんな子どもでもあたりまえに健やかに成長できる社会でなければ、未来の日本社会はありません。未来は今の子どもたちが担うからです。

子どもにかかわる支援や課題

子どもの育ちにまつわる支援や課題の対策は多岐に及び、各府省庁で管轄が分かれています。

文部科学省

  • 幼児教育・義務教育(幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専門学校など)
  • 学校でのいじめ対策
  • 自殺予防対策
  • 不登校対策
  • パワハラなどハラスメントの問題 など

厚生労働省

  • 保育園・学童保育
  • 障害児支援
  • 母子保健
  • 待機児童対策
  • ひとり親家庭支援
  • ヤングケアラー対策(児童相談所)
  • ネグレクトの防止
  • 児童虐待の防止

内閣府

  • 託児所や認定こども園
  • 少子化対策
  • 児童手当等
  • 子供の貧困対策
  • 子ども食堂(農林水産省)

警察庁(総務省)

  • 少年犯罪対策
  • 性犯罪・性的搾取防止
  • 児童買春対策

こども家庭庁の狙い

このように、子どもの育ちにまつわる支援や対策課題は各府省庁の管轄で分かれています。

「こども家庭庁」は、このような府省庁に及ぶ所掌事務を担当省庁と連携して担い、あるいは移管され、対策や各法策定を一体的に担います。

こどもの最善の利益を第一に考え、こどものことをわが国の社会の真ん中に据えて(こどもまんなか社会)、こどもを取り巻くあらゆる環境を見損なわずにこどもの権利を保障し、こどもを誰一人取り残さない社会を実現するために、その司令塔となる。それが『こども家庭庁』です。

『甲府の子育て環境』と『こども家庭庁』

甲府市の子育て環境の評価は、NPOエガリテ大手前による「第17回次世代育成環境ランキング」(2022年(令和4年)5月発表)によると、甲府市が全国60中核市の中で、第2位となりました。

そんな甲府市の子どもにまつわる施策に、こども家庭庁のスタートがどのような意味や役割を持つか?

廣瀬は2022年9月定例会本会議のこうふ未来『代表質問』にて、こども家庭庁と甲府市の取り組みについて代表質問しているので、この内容を以下に掲載します。

以下の「甲府市議会だより」のページからも見られます

代表質問って?

市議会にて議案や市政への質疑を行うための質問です。具体的には2つの形式、『会派を代表して行う「代表質問」』と『議員個人が行う「一般質問」』があります。ちなみに、代表質問の質問時間はあらかじめ決まっていて、会派の所属議員が4人の『こうふ未来』場合、12分×4人=48分となります(議員の発言時間で、質問に対する回答時間は除く)。

その様子は『市議会だより』からも知ることができます。

『プッシュ型支援』『アウトリーチ型支援(訪問支援)』〜甲府では?

こども家庭庁の基本方針のポイントとして『プッシュ型支援』『アウトリーチ型支援(訪問支援)』があります。

『プッシュ型支援』『アウトリーチ型支援(訪問支援)』とは、待ちの支援から予防的な関わりへシフトし、支援を必要とする子どもと家庭に、『子どもや保護者が相談窓口や施設に出向かなくても』家庭に支援が届くようにすることです。

地域における関係機関やNPO等の⺠間団体等が連携して、こどもにとって適切な場所に出向いてオーダーメイドの支援を行うアウトリーチ型支援(訪問支援)、SNSを活用したプッシュ型の情報発信が進められます。

廣瀬は、こども家庭庁のプッシュ型支援についても甲府市の実例を交えて議会で質問し、回答を得たので、ここにご紹介します。

なお、会議録全文は、甲府市議会ホームページ内の会議録検索システムで見られます。以下のリンクは廣瀬の質問と甲府市の回答を見られます。

https://www.city.kofu.yamanashi.dbsr.jp/index.php/6749585?Template=document&VoiceType=all&DocumentID=791#all

以下はその抜粋です。

甲府市議会での質問①〜甲府の政策立案がプッシュ型、アウトリーチ型の視点で作られているか?

廣瀬質問:こどもまんなか社会を目指す「こども家庭庁」の創設は、①こどもの視点で②すべての子どもを③誰一人取り残さず④切れ目なく包括的で⑤プッシュ型支援、アウトリーチ型支援に転嫁し➅データ・統計を活用したエビデンスなどを基本理念としています。「甲府市子ども・子育て支援計画」をこれらの視点で見直した時、これらの施策が⑤プッシュ型支援、アウトリーチ型支援に転嫁や➅データ・統計を活用したエビデンスに基づいた視点で政策立案されているのか、当局の見解をお訊ねします。

当局:廣瀬議員の代表質問にお答えします。私からは、本市の子ども・子育て支援計画についてお答えいたします。
 私は、全ての子どもたちがふるさとを愛し、夢に向かってたくましく育つことを、全力で応援していくまちづくりに向け、これまでの子育て支援に子ども自らの育ちを大人が応援していく子育ち応援を加えた、子ども支援の施策及び事業を総合的に取りまとめた甲府市子ども・子育て支援計画を、令和2年3月に策定いたしました。
 本計画の策定に当たりましては、子育て家庭を対象に実施したアンケート調査により、核家族化や共働き世帯、母親のフルタイム就業の増加という本市の特性を把握することで、懸念される育児の孤立化に対する子育て支援の取組や、子どもの育ちを応援する団体のネットワーク化などの施策立案につなげるとともに、幼児期の教育・保育サービスに関するニーズ調査に基づき、幼稚園や保育所、地域子育て支援センターなどのサービス需要等の設定を行ったものであります。
 また、プッシュ型支援とアウトリーチ型支援への転換に関しましては、現計画においてその考え方を明記しておりませんが、私は、これからの行政運営を推進する上では、市民が利用できる様々なサービスについて、必要な情報が必要なタイミングで案内され、受動的にサービスの提供を受けることができるプッシュ型支援と、複雑・複合化する支援ニーズに対して行政が主体的に動いていくアウトリーチ型支援を強く意識し、種々の支援施策を推進していくことが不可欠であると考えております。
 こうした考えのもと、本市のプッシュ型の子育て支援では、子育て支援アプリ「すくすくメモリーズ」を活用し、予防接種や健診の情報などを発信し、予防的な関わりを強化するための取組を実施しているほか、各種給付金につきましても可能な限りプッシュ型での支援を実施してまいりました。
 また、アウトリーチ型支援につきましては、助産師が自宅に伺い産後ケアを提供する「おうちdeホッとママケア」による支援をはじめ、乳児家庭全戸訪問事業や、養育支援が特に必要な家庭への養育支援訪問事業、さらには、子ども相談センター「おひさま」の専門員による家庭訪問を通じて、様々な事情により自らが相談機関と接点を持ちにくい家庭等に対しましても、本市が主体的に関わりを持って、養育環境等の把握や具体的な相談・助言等を行い、支援につなげております。
 今後におきましても、子どもの笑顔を家庭と地域全体で支えるまちづくりに向け、行政の主体性をより発揮する中で、本市の子ども・子育て支援のさらなる充実・強化に努めてまいりますので、何とぞ御理解を賜りたいと存じます。
 ほかの御質問につきましては、担当部長からお答え申し上げます。

当局:次世代育成環境ランキングについてお答えいたします。
 本市では、未来を担う子どもたちが健やかに成長できるまちづくりを目指し、妊娠期から子育て期における切れ目のない支援に取り組むとともに、地域全体で子育てや子育ちを支援・応援する環境づくりを推進しております。
 こうした中、令和3年5月に発表されたNPO法人エガリテ大手前による第16回次世代育成環境ランキングにおきまして、本市の子育て環境が全国58の中核市の中で第3位と評価され、子育て優秀環境賞を受賞したところであり、また、2021年度版の新たなランキングでは、全国60の中核市の中で第2位と、さらに高く評価いただいたところであります。
 このランキングにつきましては、NPO法人エガリテ大手前が一般市民の視点からの独自の手法を用いて、子どもに関する施設の充実度を評価したものであり、その具体的な内容は公表されていないことから、詳細は分かりませんが、2か年の評価結果からは、小児救急医療や児童福祉、児童養護、出産環境、乳幼児保育などの項目で子育て環境が評価された一方で、児童保育や母子父子福祉などが他都市に比べ至っていない状況にあるとされております。
 今後におきましても、こうした指標なども1つの参考としつつ、引き続き本市が進める子育て、子育ちの両輪から、全ての子どもが心身共に健やかに成長できる施策・事業の推進に努めてまいります。
 次に、ファミリー・サポート・センター事業についてお答えいたします。
 ファミリー・サポート・センター事業は、保育施設や学童施設などまでの送迎や、一時的な子どもの預かりといった、子育ての援助を受けたい人と援助を行いたい人を会員とする相互援助活動であり、見込まれる事業の量等につきましては、平均的な実績を考慮した設定としております。
 現在、依頼会員と援助を行う協力会員の数には開きがあるものの、援助を受ける会員からの依頼には対応できている状況でありますが、本事業の利用をさらに促し、子育てをしながら働く環境を整えていくため、今後におきましても、依頼・協力双方の会員の掘り起こしや、制度のさらなる周知に努めてまいります。

https://www.city.kofu.yamanashi.dbsr.jp/index.php/6749585?Template=document&VoiceType=all&DocumentID=791#all

甲府市議会での質問②〜『児童虐待防止対策』『子どもの貧困対策』における甲府市のプッシュ型・アウトリーチ型支援の例

廣瀬:次に、児童虐待防止対策のさらなる強化と、子どもの貧困対策についてお伺いいたします。
 本年5月21日に、社会福祉法人山梨立正光生園により、家庭における子どもの健全な養育を後押しするための包括施設「地域総合子ども家庭支援センター・テラ」が設立され、竣工されました。2017年に厚生労働省の有識者会議がまとめた「新しい社会的養育ビジョン」で求められている、各市区町村に養育相談や支援で中心的な役割を果たす、子どもの支援拠点として整備を求められている施設です。
 「地域総合子ども家庭支援センター・テラ」は、子ども家庭支援センター、フォスタリング機関(里親養育包括支援事業)、子どもの心のクリニック、そして、子ども家庭ソーシャルワーク専門職養成研修・研究所の、4つの施設を整備し、国内でも最高峰の体制を整えています。子どもの発達の課題の多くは家庭での養育にあり、子どもの虐待や貧困が深刻化する中、次世代への連鎖を防ぎ、安心して暮らせる家庭環境を整えるのが目的です。自宅に出向き、養育や家事を支援する在宅支援事業を核に、支援事業を始めています。先ほど質問いたしましたアウトリーチ型・プッシュ型支援を実践しています。
 この、甲府市内に設置された子ども家庭支援センターと甲府市は、どのような協働をしていくのでしょうか、対応をお聞きいたします。

当局: 私からは、地域総合子ども家庭支援センターとの協働についての御質問にお答え申し上げます。
 市内の社会福祉法人が設立いたしました「地域総合子ども家庭支援センター・テラ」は、家庭における子どもの健全な養育を後押しする包括施設としての機能を有しており、児童相談所の補完的役割を果たす拠点として、子どもと家庭に関する様々な相談に応ずる児童家庭支援センターや、里親の募集や研修、子どもとのマッチングなど、里親の養育に係る包括的支援を行うフォスタリング機関を担うとともに、子ども家庭福祉分野の研修・研究を行うなど、子どもの虐待や貧困が深刻化する中で、次の世代への連鎖を防ぎ、安心して暮らせる家庭環境づくりに御尽力いただいております。
 児童福祉法では「国及び地方公共団体は、児童が家庭において心身共に健やかに養育されるよう、児童の保護者を支援しなければならない」と定めるとともに、実の親による養育が困難であれば、里親や特別養子縁組などで養育されるよう、家庭養育優先の理念を規定している中で、包括施設との連携は重要なものであると認識しております。
 こうした中、本市では、子ども相談センター「おひさま」の保健師や社会福祉士等の資格を持つ専門職が、テラの専門職と連携・協働し、虐待対応をはじめとする要保護児童の支援を行うとともに、家庭において児童を養育することが一時的に困難となった場合などに、一定期間養育・保護を行う子育て短期支援事業を委託しているほか、テラ主催の各種研修にも参加するなど、職員の専門的知識の向上も図っております。
 今後におきましても、包括的な養育支援機能を有する「地域総合こども家庭支援センター・テラ」との連携・協働に努める中で、引き続き社会全体で子どもを育む社会的養育の環境づくりを推進してまいりたいと考えております。

https://www.city.kofu.yamanashi.dbsr.jp/index.php/6749585?Template=document&VoiceType=all&DocumentID=791#all

こども家庭庁の課題

こども家庭庁の課題として以下が指摘されています。

・幼稚園そのものがこども家庭庁に移管されていないので、幼児教育・保育をこども家庭庁が一貫してカバーできないのではないか?

・幼保一体化(一元化)政策の実現も関係者から望まれたが、その実現には至らないのではないか?

とはいえ、こども家庭庁の設置は来年4月、これから新設される庁なので、課題の改善も図られるでしょう。

以上、こども家庭庁の解説でした。

少子化や子どもの育ちの問題は、日本全体の大きな課題です。国と地方自治体が連携して、いますぐに施策をすすめていく必要があります。

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