幼児期教育の新潮流(非認知能力、国際バカロレア、ユネスコスクール)を解説

2019年6月1日

 

非認知能力、国際バカロレア、ユネスコスクールなどの言葉を聞いたことはありますか?

これらの言葉はジャンルこそ違いますが、いずれも次世代の教育に関わる概念・制度です。

IQや学力テスト、TOEICなどがある特定の能力を評価するのに対して、これらの言葉は特定の能力というよりは概念的な提唱。個人のコミュニケーション能力や自己表現・自己実現を培おうという考え方がその土台にあります。

非認知能力、国際バカロレア、ユネスコスクールがその先に見据えるものは『経験』することにより身につけられる人間としての力です。広い視野、意志、勇気、論理的な思考力など、社会で自己実現していく上で必要な能力です。

日本ではまだなじみのない言葉ですが、国際的にはすでに普及しつつあります。

そこで、非認知能力、国際バカロレア、ユネスコスクールの3つをここで解説したいと思います。

 

非認知能力、国際バカロレア、ユネスコスクールがその先に見据えるものは『経験』することにより身につけられる人間としての力

 

非認知的な能力(Noncognitive skills)とは

非認知的な能力とはIQや学力テストなど明確に定義できる能力とは異なり、『生きる力』や『興味・感心』を高める総合的な能力です。

一口に定義できる能力ではなく、たとえば、自己の成長を促す力、チャレンジ精神、耐え抜いてやり抜く力、目標に向かって頑張る力、自己肯定感、冷静になり自制する心、感情をコントロールする力、熱意など、これらすべてが該当します。

また、他者との関係を築く力、コミュニケーション能力、論理的な思考力、他者へ配慮できる気持ちなども非認知能力です。

非認知能力が重要であることの根拠

のちにノーベル経済学賞を受賞するジェームズ・ヘックマンらは、1960年代に長期的に調査を行い、就職する前の教育やさらにその前の幼少期の教育・環境が、社会人になってからの仕事ぶりや社会的能力に重要だと報告しています(Heckman and Scheinkman, 1987、Heckman and Masterov, 2007など)。

具体的には、ジェームズ・ヘックマンらは、幼児期の教育が、成長の過程で、また成人してから、個人の資質にどのような効果を及ぼすか、その教育の内容も加味しながら研究しました(これを縦断研究と呼びます)。その結果、雇用形態や所得、学歴に非認知能力が影響することが分かりました。以下のサイトで分かりやすくまとめられていますので是非ご覧ください。

 

こども園でも注目される非認知能力

非認知的な能力の定義や影響の測定方法には難しく、研究者もその評価方法を検討しているところですが、非認知的な能力を乳幼少期に身につけると、大人になってからも幸せ度が増したり、仕事面、経済面の安定を得やすいことから、幼稚園、保育園でも非認知的な能力に注目しています。

とくに海外の幼児教育でもすでに、非認知能力を培う教育プログラムに取り入れているところがあります。

一方、国内では本やメディアでは一部注目されているものの、保育施設や小学校が具体的に教育へ導入しているケースは少ないようです。

まだまだ国内では認知度の低い非認知能力ですが、子育てに取り入れたい、子供と関わる職業なので知っておきたい、という方は以下の本がオススメです。

 

「こども・保育・人間 (Gakken保育Books)」 汐見稔幸 著 2018

こちらの本では、非認知能力が分かりやすく説明されています。子供が魚獲りを行うシーンに例えて、魚を獲るための道具を作り続ける集中力、どこなら獲れるか経験的に動く直感、獲れるまで諦めない忍耐、獲れなくても落ち込まない楽天性、友達と協力して魚獲りを行う協調力など、これらすべてが非認知能力であることを説明しています。

 

今後、非認知的な能力は幼児教育のシーンに導入されていくと思われますが、昔からある保育園での遠足や園庭での遊び、運動会などは非認知的な能力を培う場かもしれません。定義こそされなかったものの、いつの時代も親や周囲の大人はどうやったらこの子が『自分で生き抜く力を身につけられるか』を真剣に考えて、そうして成り立った行事や習慣なのかもしれませんね。


 

国際バカロレアについて

日本ではまだなじみがない言葉ですが、最近新聞などのメディアで目にするようになりました。いったどんな制度でしょうか?

国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)とは

国際バカロレアはスイスのジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構が認定する国際的な教育プログラムです。

このプログラムを通して生徒に、国際的に通用する思考力やコミュニケーション力を身につけさせるものです。すでに世界140カ国で認定され、4800校以上がプログラムを実施しています(日本での認定状況は後述します)。

文部科学省が国際バカロレアを進めています。

日本国内では文部科学省が国際バカロレアの普及を進めています。文部科学省のサイトでは以下のように国際バカロレア紹介されています。

国際バカロレアは、1968年、チャレンジに満ちた総合的な教育プログラムとして、世界の複雑さを理解して、そのことに対処できる生徒を育成し、生徒に対し、未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付けさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保することを目的として設置。現在、認定校に対する共通カリキュラムの作成や、世界共通の国際バカロレア試験、国際バカロレア資格の授与等を実施。

出典:文部科学省『国際バカロレアとは』(http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/1307998.htm)

国際バカロレアには4つのプログラムがあります

国際バカロレアは生徒の年齢などに応じて現在4つの教育プログラムがあります。このいずれかのプログラムを国際バカロレア認定教育機関に提供することになります。

1 プライマリー・イヤーズ・プログラム。
幼児から児童にかけて、精神と身体の両方を発達させることを重視したプログラムで、3~12歳を対象です。国内では22校が指定されています(2019年3月現在)。

2 ミドル・イヤーズ・プログラム。
青少年に対して学習したことと社会とのつながりを学ばせるプログラムで、11~16歳が対象です。国内では14校が認定されています(2019年3月現在)。

3 ディプロマ・プログラム。
決められたプログラム、カリキュラムを2年履修したのち、最終試験を受け、一定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得できます。原則として英語かフランス語、スペイン語で実施されるのが特徴です。16~19歳が対象で、国内では33校が認定されています(2019年3月現在)。

4 キャリア関連プログラム。
生徒が生涯に渡ってキャリアを形成していく上で役立つスキルの習得を進めるプログラムです。キャリア教育・職業教育に関連したプログラムで、対象は16~19歳です。

国際バカロレアのメリットは?

高校などが導入するディプロマ・プログラム(DP)で生徒が一定の成績を収めて与えられる『国際的な大学入学資格』がメリットの一つです。

ハーバード大学など海外の有名大学でも国際バカロレアを入学資格の一つとして認めているため、海外の大学への進学や将来海外で働くキャリアを考えている人には大きなメリットがあります。入学後、授業の受講が免除になったりなどの優遇もあります。

また、国際バカロレアは世界基準で作られたカリキュラムであるため、高校生から国際的に通用するコミュニケーション力や思考力、表現力を身につけることができます。それは、個人の資質を向上するもので、グローバル化社会で活躍しようとする場合、大きな武器、スキルになります。

国内の認定校は?

前述のように、文部科学省は日本の高校などに国際バカロレアの認定が普及していくことを推進しています。

現在、国際バカロレアに認定されている教育校は以下で、その数は増えつつあります。

http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/1307999.htm

※最新の認定校が表示されていない場合があります。

幼児教育と国際バカロレア

国際バカロレアにおけるプライマリー・イヤーズ・プログラムが幼児から児童(3~12歳)を対象にしており、国内でも22校が指定されています(2019年3月現在)。多くはインターナショナルスクールです。

これらのインターナショナルスクールや海外のKindergarten、Preschoolが国際バカロレアのプライマリー・イヤーズ・プログラムを取り入れる目的の一つは、幼少期から世界・地球の共有意識を身につけ、グローバルな考え方を子どもが持てるようにすることです。インターナショナルスクールという場だからこそ、国際バカロレアのプログラムのコンセプトは親和性が高いようです。

ユネスコスクールとは

ユネスコスクールの制度は、参加スクールにユネスコの理念を実現するために、平和の実現や国際的な連携の実践を促す制度です。

ユネスコの理念はユネスコ憲章に基づいています。

第1条 目的及び任務
1  この機関の目的は、国際連合憲章が世界の諸人民に対して人種、性、言葉又は宗教の差別なく確認している正義、法の支配、 人権及び基本的自由に対する普遍的な尊重を助長するために教育、科学及び文化を通じて諸国民の間の協力を促進することによって、平和及び安全に貢献することである。

出典:文部科学省「日本ユネスコ国内委員会」(http://www.mext.go.jp/unesco/004/1339976.htm)

ユネスコスクールの目的

世界中の学校と交流し、生徒間・教師間で情報や体験を分かち合い 、地球規模の諸問題に若者が対処できるような新しい教育内容や手法の開発、発展を目指すこと。

出典:『ユネスコスクールへようこそ』(http://www.unesco-school.mext.go.jp/aspnet/)

ユネスコスクールの活動内容

以下の活動に参加し、ユネスコの理念を実現していきます。

  •  国内外のユネスコスクールと交流する機会の増加
  • 米国、韓国、中国等海外との教員交流
  •  ESDのための教材、情報の提供
  • ユネスコスクールHPを通じた情報交換
  • ユネスコスクール全国大会をはじめ、ワークショップ、研修会への参加
  • 国内の関係機関との連携強化

ユネスコスクール加盟校

加盟校は2018年10月現在、1,116校です。

 

以上が非認知能力、国際バカロレア、ユネスコスクールの解説です。

この新潮流を知って見えてくるのは、子どもが自立し自己実現していく上で『経験すること』がキーになるようです。『経験』することによって初めて身につけられることがあります。その力が子どもが将来社会に出て自己実現していく上で役立つようです。

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