先日、こうふ未来ジャーナルvol1が発行されました。
この冊子は、甲府市議会会派「こうふ未来」の日々の活動や会派に属する議員の考えを、甲府市民に分かりやすく伝えるために作られたものです。「こうふ未来」は令和元年5月に設立された新しい会派です。今回、こうふ未来代表で現甲府市議会運営委員長の廣瀬議員に、ずばり「今の甲府の問題は?」と質問してみました。
この記事の目次
ずばり「今の甲府の問題は?」
ずばり、今の甲府市の問題はなんですか?
ひろせ議員
人口減少問題です。この対応のために、甲府市は令和2年3月に「甲府市人口ビジョン」と「第二期総合戦略」を策定しています。
人口ビジョンは、国の「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」等を勘案し、甲府市における人口の現状分析を行う中で、令和9(2027)年に開業予定のリニア中央新幹線の開業など、市の将来の発展につながる効果をとらえるとともに、人口に関する市民の意識を取り入れた、甲府市の今後の目指すべき将来の方向と人口の将来展望を示すものです。
総合戦略は、人口ビジョンの目指すべき将来の方向に掲げた4つの柱を踏まえた4つの基本目標と9つの施策に位置付けた取り組みとなっています。
今回の策定の特徴は、各施策が平成27(2015)年の国連サミットにおいて採択された「持続可能な17の開発目標(SDGs)」のどの目標に結びつくのかアイコンを示していることです。
甲府市中心地の過疎化〜その原因と将来展望
中心地(甲府駅周辺)に活気が失われたと言われて久しいですが、これは時代の流れとして仕方のないことなのでしょうか(中心地の過疎化は甲府に限らず全国の地域都市での問題であるため)? それとも取り組み次第でまた活気を取り戻せるものなのでしょうか?その辺りが市民の気になるところです
ひろせ議員
活気は取り戻せます。そのために必要な視点が2つあります。
一つ目の視点は、甲府市の特徴ある人口動態で、純移動数(転入数-転出数)と昼夜間人口比率に表れています。
- 純移動数(転入数-転出数)は二十歳前の高校や大学進学の年齢では転入超過となっているものの二十歳過ぎの大学卒業や就職世代で大幅に転出超過となっています。この結果人口減少が続いています。
- 昼夜間人口比率は114.2%となっていて、昼間4万数千人が市内へ流入し2万人余りが市外へ流出し、昼間人口は22万人で2万7千人余り増加しています。関東甲信越地方の県庁所在地で最も高い比率となっています。
以上の動態から、甲府市内または山梨県内で就職企業を増やすことと、昼間人口が極端に増えることを強みととらえ、中心市街地の活性化を図ることが考えられます。
二つ目の視点は、観光施策です。平成29(2017)年の甲府市への観光客入込数は440万人で、富士・東部圏域の入込数は1,550万人です。1,550-440=1,110万人となります。これらの観光客はどこに消えたのでしょうか?
甲府市の南に位置する富士・東部圏域は東京―大阪間のゴールデン・ルート上にあり、国内でもトップの人気のある観光地です。片や北方向を見ると松本から上高地・高山、さらに富山・金沢とを結ぶ昇龍道といわれる観光ルートが整備されています。この二つの間にある山梨県甲府市は「富士は隣町」であるにかかわらず空白地帯すなわち二大観光地を分断していることとなります。つまり二大観光地を結ぶ観光施策が必要だと思います。
これからの20年で甲府市の人口は3/4へ減少
『甲府市立地適正化計画(2020年3月)』(という甲府市の都市計画、医療・福祉・商業施設・住居をどのように充実、集約していくかの将来計画の冊子)を読みました。その冒頭(9ページ目)で、甲府の人口は1995年は206,780人→2020年(現在)は193,125人→2040年に154,956人に減少と推計されています。20年で今の3/4にまで甲府の人口が減ると推定されるこの状況では、単に「中心地の過疎化対策」というよりも、甲府市全域が社会福祉、医療、しごと、子育ての水準をどう維持していくかの方が優先度の高い課題に見えました。ひろせ議員が前に触れられていた「都市機能誘導区域」とは、そんな懸念を見越し、社会機能を分散させる狙いがあるのでしょうか?
ひろせ議員
この計画は社会機能を分散させるわけではありません。この計画は、コンパクト&ネットワークをコンセプトに将来にわたり持続可能なまちづくりを実現しようとするものです。「中心市街地活性化計画」の後続の計画で、国の都市再生特別措置法第81条に基づいて策定されました。「甲府市都市計画マスタープラン」と調和を取り、「甲府市総合戦略」「甲府市地域公共交通網形成計画」「甲府市公共施設等総合管理計画」「甲府市農業振興計画」「健康都市こうふ基本構想」と連携・整合を取りながらそれぞれの施策が実施されていきます。つまり、この計画は人口減少と少子高齢社会に対応するためのものです。
都市機能誘導区域はJR甲府駅を含む5か所で、都市機能と呼ばれる商業施設やコンベンション、飲食や医療、子育て施設などを拠点地域に誘導・集約し、各種サービスの効率的な提供を図ります。JR甲府駅とリニア新駅は、基幹的公共交通で結びます。居住誘導区域は人口密度を維持し、生活サービス等が持続的に確保されるよう居住を誘導します。
甲府駅北と南周辺の整備が終わりました。この周辺の民間施設と公設施設を合わせた会議室の収容人数は2,000人を越えています。県民文化ホールと合わせたコンベンション企画を考えるべきです。甲州夢小路やお城フロントの整備も進みつつあります。天守閣の復元も期待されます。また、県庁所在地で中心に温泉群があり、市内に湯村温泉郷と呼ばれる貴重な資源も有効に生かしたいものです。松山市の道後温泉郷は、本館が現在修復中ですが道後REBORN計画を立て行政が全面的に支援運営して多くの観光客を集めています。
右肩上がりに経済成長していた『あれもこれも何でもできた』時代の価値判断から、均衡ある負担配分を意識した未来指向型の政策的価値判断をしなくてはならない
こうふ未来ジャーナルvol1で「(ひろせ議員)右肩上がりに経済成長していた『あれもこれも何でもできた』時代の価値判断から、均衡ある負担配分を意識した未来指向型の政策的価値判断をしなくてはならない」と書かれていたのが印象的でした。具体的にはどのようなことですか?
ひろせ議員
甲府市予算の直近の10年を考察すると、一般財政規模750億程度ですが、徐々に上昇している傾向がみられます。しかしながら、経常収支比率は近年上昇し続け、90数%となっています。実質公債費率は減少に転じていますが、公債残高と将来負担比率は上昇しています。これは、臨時財政対策債が引き起こす現象で、交付税の不足を自治体の公債発行で補填し、将来にわたり国が交付税措置をしていく仕組みのものです。国も地方自治体も少子高齢社会に対応して医療・介護などの民生費が上昇を続けているため、自治体の財政は硬直化の道を進み始めていますので、均衡ある負担配分を意識した未来志向型の政策的価値判断が求められています。すなわち、残り少ない政策的経費をいかに有効に予算配分していくか、首長と地方議会の知恵比べが必要となります。
※(筆者注)経常収支比率・・・地方税など自治体の毎年の収入に対し、人件費・扶助費など経常的に発生する経費の割合で、100%に近いほど財政が硬直化し「ゆとりがない」と言え、70%台など低ければ財政に余裕があり予算に弾力性があるとされる。
地方自治の役目
ひろせ議員は長年、地方自治について取り組まれ、甲府市の自治基本条例が制定されたときは「甲府市自治基本条例をつくる会」の会長として1年半の議論の後、当時の宮島市長へ提言として案文を提出する役割を果たされました。新型コロナの影響で同じ緊急事態宣言が出されても、財政状況に応じて市県民への支援の打ち出し方が異なるなど、自治体ごとに新型コロナ対応が異なります。危急時に地方自治の輪郭が見えたということだと思いますが、甲府市の活性化や将来計画において地方自治はどのような役目を持っていくとお考えですか?
ひろせ議員
現在新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、全国に緊急事態宣言が出され、様々な職種の方々の仕事が止まってしまいました。学校も臨時休業が続き子どもたちの遊び場も確保することができません。しかし半年間近くの長く暗いトンネルも前方に明かりが見えてきました。それぞれが力を合わせて助け合いながら生きていかなければならない時だと思います。医療・福祉の感染防止最前線で戦っていらっしゃる方々にエールを送りながら、まちを蘇えさせる努力をみんなで頑張りましょう。
私の議員活動は、「人そだて」「まちそだて」「議会そだて」を公約として、市民福祉の向上に努力しています。
「人そだて」は、全国でもトップクラスの子育て環境をしっかりと支え、AIの時代を生き抜く力と思いやる心を育てる教育・保育環境づくりを目指します。
「まちそだて」は、2019年4月より中核市となった甲府市の役割をしっかりと支えていきます。中心街の活性化には、地場産業を中心とした集積(横丁)づくりを核として進めていきます。中核市移行に伴い、新たに甲府市に保健所(健康支援センター)が設置されましたが、今回の新型コロナウイルス感染拡大防止の中核を担いました。今後も健康支援センターの体制づくりに尽力します。
「議会そだて」は、市民意見交換会を開催し、市民意見・要望を政策実現する仕組みづくりのため、議会基本条例を提言します。
取材:ヒノキブンコ