甲府の子育てが全国で1位(中核市)【第19回2024年5月発表】〜どんな点で評価されたの?

2024年6月26日

甲府の子育て環境が全国の中核市の調査で1位に!(第 19 回 次世代育成環境ランキング 2023年度)

具体的にどんな点で評価されたのか解説し、甲府市の子育て環境の特徴や日本の子育て環境の課題を考えます。

甲府の子育てが『次世代育成環境ランキング』で1位に!

NPOエガリテ大手前による「第19回 次世代育成環境ランキング 2023」(2024年5月発表)によると、甲府市が全国62中核市の中で総合順位1位になりました。

具体的には下表のように、『小児医療』で1位、『児童福祉』で2位、『児童養護』で3位、総合順位で1位でした。

「第19回 次世代育成環境ランキング」(2024年5月発表)

ちなみに、その前の調査では以下

  • 第18回 次世代育成環境ランキング (2022年度)で総合順位3位
  • 第17回 次世代育成環境ランキング (2021年度)で総合順位2位(下表)
  • 第16回 次世代育成環境ランキング (2020年度)で総合順位2位
  • 第15回 次世代育成環境ランキング(2019年度)で総合順位2位

甲府市は上位常連組です。小児医療、児童福祉、児童養護の分野で長年高い評価を受けています。

第17回 次世代育成環境ランキング (2021年度)(出典:NPO エガリテ大手前HP)

「次世代育成環境ランキング」の評価方法は?

子育てにまるわる環境を出産、乳幼児保育、児童福祉、児童養護、児童保育、母子福祉、小児医療の評価項目に分けて評価されました。

評価方法は、公開されている統計データに、独自の重み付けなどを行い、ランキングしました。

統計データには、たとえば出産環境なら「助産施設所数」「電話相談数」「健診事後指導数」などを、児童福祉なら「児童家庭支援センター所数」「子育て支援センター所数」「児童福祉施設所数」など、小児医療なら「小児夜間救急 平日夜間開所数」「日祭日昼間開所数」などのデータから点数を算出されました。

甲府市の子育て環境、その特徴は?

評価方法が分かったところで、甲府市の結果に戻ります。

前述のとおり、第 19 回 次世代育成環境ランキング 2023年度では、甲府市は『小児医療』の分野で1位、『児童福祉』の分野で2位、『児童養護』の分野で3位、総合順位1位でした。長年、小児医療、児童福祉、児童養護の分野で高い評価を受けていますが、具体的にこれらの分野で甲府市のどんな点が評価されているか、考えていきます。

山梨県、甲府市の小児医療

小児医療については、小児初期救急医療センター(初期救急医療機能を強化した施設)を山梨県全県一区でいち早く整備したこともあり、山梨県は全国の中でも小児科医が働きやすい環境と言われています。

日本医師会の特別賞を受賞し、全国の医師会からの視察、見学もあったようです。

このような取り組みが評価されていると考えられます。

山梨県、甲府市の児童福祉〜『マイ保健師』+『市内19ヶ所の子育て支援施設』の連携

甲府市には19ヶ所の子育て支援センター・幼児教育センター・つどいの広場などの子育て支援施設が配備され、この数は全国トップクラス。

甲府市は、子育て世代包括支援センターを設置し、すべての妊産婦に担当の保健師を配置するマイ保健師制度を導入しています。担当エリア別に児童を受け持ち、健康診断、保健指導、生活環境を把握。保健師がより効率的に、きめ細かく児童の様子を把握し、市内19ヶ所の子育て支援センター・幼児教育センター・つどいの広場などの子育て支援施設と連携して子育て支援や保育所、幼稚園、認定こども園の入園に繋げています。

子育て支援センターなど子育て支援施設は親子が日常的に集う場所であるため、児童の日々の様子を職員が自然な形で把握できていることが多いのです。そんな情報を一定の条件の下でマイ保健師と連携し、ケアが必要な子供の早期発見や支援に繋げています。これは甲府市の特徴です。

甲府市の子育て世代包括支援センターが目指すもの

こちらの詳しいことは、2020年3月26日にこのサイトで公開した『【レポ】山梨県で初!「第10回子ども・子育て支援全国研究大会2019in山梨」が甲府で開催されました』の記事の中の、以下のセクションでも紹介されています。

甲府市の子育て支援の新しい取り組み〜マイ保健師と地域の子育て支援施設が連携

児童虐待への取り組み

本年新たに児童家庭支援センターが設置され、「子育て支援センターカ所数」などのデータからの算定で児童福祉が全国中核市の中で2位と評価された甲府市。しかし、だからといって、児童虐待がゼロということではありません。

国内の虐待問題は待ったなし。

2020年度の児童相談所の虐待相談対応件数は20万5029件。さらに、虐待を受けているのに通告されない子どもはその数倍います。「日本では顕在化するのに時間がかかっている。現実には、子どもたちの問題は潜在している」(社会福祉法人 山梨立正光生園 加賀美理事長、詳しくは以前の取材記事をご覧下さい↓)

長年、「子どもの養育」において地域で中心的な役割を果たしてきた社会福祉法人の一つ、山梨立正光生園さん。親から虐待などを受ける子どもが家庭で健全な養育を得られるよう、専門スタッフなどを配置して包括的に支援する「地域総合子ども家庭支援センター・テラ」の運営をスタートしました。

山梨県および県内市町村は、一丸となって児童虐待根絶に向けて取り組んでいくことを宣言しています。

日本の子育ての課題は?

日本の子育ての課題は待機児童、出生率、働くママの出産・子育て環境など多くあり、それらが互いに絡み合っている状況。

なかでも、もっとも深刻な問題の一つは児童虐待。前述の施設の加賀美理事長は以前の取材で以下のように指摘しました。

欧米では日本より約30年前(1960年代)から子ども虐待問題に取り組んでいる背景があるため、実際の虐待件数は報告の値に近づいている。統計で見ると、アメリカの子ども虐待報告件数は300万件、イギリスは50~60万件、カナダは30万件。その結果から、先進国では人口のおよそ1%程度の子どもが虐待を受けているという実態が見えてきた。日本にこの割合を適応すると、日本の人口の1%、127万人の子どもが何かしらの虐待を受けている可能性がある。実際の通告件数と6倍近い乖離(かいり)がある。

https://hiroseshuichi.com/katei-shien

子どもの社会的養護や子どもの権利の考え方が決して進んでいるとは言えない日本にあって、児童虐待は顕在化するのに時間がかかっていると考えていいでしょう。いち早い対策が急務です。

甲府市ではどのような取り組みを進めているか?今後、取材してご紹介します。

以上、「甲府の子育てが環境部門で3位〜甲府の子育ての特徴や課題」でした。未来を担う子どもたち。その育ちの環境が甲府市が全国で評価されたのは光栄ですが、児童虐待問題や子育て支援でまだまだ課題は山積しています。現状把握と早期解決が望まれます。

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