※今回の記事は、甲府市議会令和4年12月定例会での廣瀬集一による「こうふ未来」代表質問を元にした解説記事です。
この記事の目次
若者たちの甲府への想いに大人はどう応えるか?
11月12日、甲府市議会本会議場にて「第31回21世紀を考える少年の主張大会」(甲府市と青少年育成甲府市民会議が主催)が開催され、廣瀬も傍聴しました。
「少年」とありますが、この場合、少年と少女が含まれます。法律用語で「少年」とは5歳から14歳までの世代を指す言葉で性別は問いません。
この大会では、市内15校の中学校の代表の生徒さんたちが、ご自身が住む甲府の町について考えていることを、『平和』や『環境』、『思いやり』、『SDGs』、『笑顔』、『ジェンダーフリー』、『もったいない』などのテーマで語ってくれたのですが、その姿と主張に感動することしきりでした。
傍聴しながら「少年たちに大人が残せるものは何だろう」、「甲府市の一番大切なものはなんだろう」と考えていたら、「甲府市市民憲章」が思い浮かんできました。そして「9つの都市宣言」でした。また、それを推進するための最高規範となる「甲府市自治基本条例」でした。
どれも今後10年、20年、50年と伝えていくべきものですので、今回はこの3つについてご説明します。
大切なものでも、どうやら時代に合わせたアップデートも必要のようです。
甲府市市民憲章
甲府市のまちづくりの理念として56年前に制定されたのが甲府市市民憲章です。
美しい自然と古い歴史に恵まれて栄えてきた甲府市は、いまや、あらたな近代都市として、大きく発展しようとしています。わたくしたちは、この甲府の市民であることに誇りと責任を感じ、市民憲章のもとに力を合わせ、よりよい甲府市をつくることに努めます。
1 まじめに働き、栄えるまちをつくります。
https://www.city.kofu.yamanashi.jp/shimin-somu/shise/gaiyo/profile/kensho.html
1 きまりを守り、住みよいまちをつくります。
1 たがいに助け合い、楽しいまちをつくります。
1 からだをきたえ、明るいまちをつくります。
1 教養を高め、文化のまちをつくります。
甲府市市民憲章は甲府市の理念ですが、当時の時代背景を反映した言葉も使われているため、今に併せた改訂が必要だと思います。
甲府市議会令和4年12月定例会にて廣瀬集一によるこうふ未来の代表質問で、甲府市市民憲章の見直しについて甲府市の見解を求めたところです(その問答については、以下の「令和4年12月定例会」からご覧いただけます)。
甲府市の都市宣言
甲府市に脈々とつながれてきた価値観は、9つの都市宣言などに表明されてきました。いわば未来への約束です。
そんな都市宣言ですが、9つの宣言が表明されています。年代順に列挙すると、以下のようになっています。
1.交通安全都市宣言 昭和36年12月 甲府市議会発
2.無公害都市宣言 昭和46年7月 甲府市議会発
3.核兵器廃絶平和都市宣言 昭和57年7月 甲府市発
4.緑化推進都市宣言 昭和61年3月 甲府市発
5.ゆとり創造都市宣言 平成2年7月 甲府市議会発
6.ボランティア都市宣言 平成6年12月 甲府市発
7.生涯学習都市宣言 平成10年6月 甲府市発
8.男女共同参画都市宣言 平成25年6月 甲府市発
9.健康都市宣言 令和元年9月 甲府市発
※『発』とは、市長が提案したか、議会が提案したか?を示します。甲府市発なら、市長が提案したことになります。
こちらの甲府市の都市宣言ページでそれぞれの宣言についての詳細が見られます↓
各宣言は、憲法を含め何を拠り所としたかの「準拠法令」やビジョンを示す「基本構想/基本計画/ビジョン」を解説する「解説文」などから成ります。具体的に挙げると、①準拠法令 ②甲府市条例または基本計画 ③第6次総合計画 ④自治基本条例 ⑤解説文が必要となります。
このうち、たとえば宣言の解説文があるのは「健康都市宣言」と「男女共同参画都市宣言」だけで、他の7つの宣言には解説文はありません。
また、甲府市の地方自治の最高規範となる「甲府市自治基本条例」に触れられているのは、平和都市宣言が前文に当てはまるとして、計4つの宣言が記載されているに留まりました。
このように都市宣言を見てくると、①準拠法令 ②甲府市条例または基本計画 ③第6次総合計画 ④自治基本条例 ⑤解説文の5つのフルセット完備の宣言は、平成25年に策定された「男女共同参画都市宣言」以外にはありません。
これらの現在の状況を以下のようにまとめてみました。
自治基本条例とは?
自治基本条例とは、市町村の自治体運営の基本原則、地方自治の最高規範です。住民の権利やまちづくりの方向性を定めた条例で、自治体の「憲法」とも言われます。
2000年(平成12年)の地方分権一括法の施行によって、地方創生、地方分権が求められるようになりました。その時代の中で、「地方のことは地方が考えて決める」という地方自治の役割や市民参加・協働のプロセスを明確にするため、平成19年に「自治体運営の原則」や「施策を決める際の意思決定の仕組み」などを定めた甲府市自治基本条例が制定されました。甲府市自治基本条例の制定は全国でも先進的なもので、さきがけとなる「第10条 子どもの権利」の条文もあります。
このように見てくると、甲府市市民憲章と都市宣言には準拠法令の明確化が必要ですが、基本的に市民の価値観を共有できる甲府市自治基本条例を根拠として推進していくことが最善ではないかと思います。
では具体的に、甲府市の都市宣言についてどのような観点で見直しすべきか、廣瀬は甲府市議会12月議会こうふ未来の代表質問の中で提案しましたので、ここで紹介します。
『生涯学習都市宣言』の見直し提案
生涯学習都市宣言は、ユネスコ成人教育推進国際会議の生涯学習の提言にはじまり、平成2年の(通称)生涯学習推進法により推進され、甲府では「甲府きょういくの日」共同宣言を含め甲府市の人づくりの柱となっています。
また、平成2年の国民生活白書は日本でいちばん住みやすい県として山梨県を評価し、その寄与した2つの指標の一つは「公民館活動に費やす時間の多さ」すなわち生涯学習の盛んな土地柄という証明でした。条例での裏付けや、丁寧な解説文の必要性を感じます。
甲府市議会 こうふ未来 代表質問(廣瀬集一、2022年12月)
『ボランティア都市宣言』の見直し提案
ボランティア都市宣言に関しては、ボランティア活動の推進として「甲府市協働によるまちづくりに関する基本方針」や「自治基本条例」、「第3次健やかいきいき甲府プラン」にも策定され、推進が積極的に行われています。
甲府市ボランティアセンターが災害時に中間支援組織としてのさらなる活動の位置づけが期待されます。
ゆとり創造都市宣言は、バブルのはじけたとされる平成2年の宣言で、政府において「働き方改革実行計画」が決定され、「夏の生活スタイル変革」(ゆうやけ時間活動推進―通称ゆう活)が推進されました。令和元年には「働き方改革関連法」が施行され、翌年からは新型コロナウイルス感染拡大対応のためワークスタイルや企業の在り方についての考え方が大きく変わってきました。
今年はまさにwithコロナafterコロナの時代にふさわしい宣言として見直しの機会だとも考えます。
甲府市議会 こうふ未来 代表質問(廣瀬集一、2022年12月)
『緑化推進都市宣言』の見直し提案
緑化推進都市宣言は、甲府市緑の基本計画で実施されていますが、最後の未整備の都市公園となった2か所は都市計画見直しで計画が中止となりました。
甲府市は地理的に山間地に囲まれ緑の多いまちと思われますが、実際は街中に緑陰を配したホットできる公園等が少なく、特に高齢者や子育て世代からは小休止や親子の憩いの場を演出する小さな公園の要望が多くあります。
既存の幼稚園、保育園、こども園など園庭の開放などの活用も含めてさらなる身近な公園等設置や活用の推進が必要です。
甲府市議会 こうふ未来 代表質問(廣瀬集一、2022年12月)
『核兵器廃絶平和都市宣言』の見直し提案
核兵器廃絶平和都市宣言は、2020年12月現在全国1,741自治体のうち1,600自治体約90%が宣言し、山梨県では全市町村が宣言しています。なおかつ甲府市は「平和首長会議」に加盟をしています。
平和憲法といわれる日本国憲法にはじまり様々な基本計画や甲府市自治基本条例の前文などに平和の祈りが謳われています。現在のような有事といわれる事態に、世界で唯一の被爆国である日本とそれぞれの地方自治体はどのような価値観を持てばよいのか、問われています。
無公害都市宣言や交通安全都市宣言は、準拠法令や甲府市の条例にも定められ、今も現役で頑張っている感があります。
このような比較分析で見えてくることは、いくつかの都市宣言は文言は明確でも、空に浮かぶアドバルーンのようで固定されている足元の基本理念が不揃いであいまいに感じるものがあります。総合計画には該当項目があるものの、策定主体が甲府市か甲府市議会かどうか、準拠法令は明確か、甲府市の条例化の必要性などの疑問に統一的な文脈的理論が必要と考えます。
甲府市議会 こうふ未来 代表質問(廣瀬集一、2022年12月)
『子ども未来応援宣言』の追加提案
2022年5月のNPOエガリテ大手前の、中核市子育て環境評価によると第2位となっています。
平成31年4月1日に甲府市が中核市へと移行しました。市の事務権限が強化されて、市民のより近いところで行政を行なうことが可能になった今、甲府市の自治を推進するための最高規範である甲府市自治基本条例で市民の価値観を共有し、さまざまな市政、計画策定の根拠にしていくことが大切だと考えます。
甲府市議会 こうふ未来 代表質問(廣瀬集一、2022年12月)
NPOエガリテ大手前の中核市子育て環境評価で甲府市が第2位になったことは以前のこの記事でも紹介しています↓
この甲府市をどんなまちにしていくか? みんなの考えは違いますが、みんなで話し合って定期的に見直して、どんなまちにしたいかを決めていかなければいけません。
そして、その大前提となるのが「甲府市市民憲章」、「都市宣言」、「甲府市自治基本条例」ということになります。では、これらは互いにどのような関係にあるのでしょうか?
企業などでよく使われる「クレド」を引き合いにしてご説明します。
クレドとは?〜地方自治にも共通する!
クレド(Credo)とは、その組織や団体が持つ理念や目的、社会的責務を実現するために、メンバー(社員や職員)一人一人が心がける信条や行動指針を指します。ときどき、名刺の裏に「私たちは皆様の笑顔のために○○します」とか「○○を通して社会のお役に立ち・・・」と書いてあることがありますが、これもクレドです。
もともとCredoは「我は信ずる」を意味するラテン語です。
「理念」はクレドと似ている意味ではありますが、基本的な考え方や理念、社会目的を指します。そのような理念だけ示されても、そのメンバーはどう行動すればいいか分からないこともあります。
そこでクレドを示して共有することで、自分で考えて主体的に行動できるようになったりモチベーションアップにつながるのです。
企業が設ける『社員クレド』が一般的ですが、実は企業に留まらず、自治体でもSDGsの目標達成も関連させるなどして、市職員のクレドを設定しているところもあります(郡山市、神戸市など)。
このように見ると、クレドがその組織や団体がビジョンを実現して豊かになっていくために重要であることが分かります。
自治基本条例はクレド(約束)と長期計画を支える『絆』
甲府市の理念やビジョンを実現していくのは市民の皆様。「都市宣言」が具体的な行動指針を規定するクレドに近い存在なら、「自治基本条例」は市の理念やビジョンと言えます。そして、それを実現していくための計画が甲府市の『総合計画』です。
甲府市の総合計画は以下からご覧いただけます。
以上、「甲府市市民憲章」や「都市宣言」、「甲府市自治基本条例」についての解説でした。