『子ども食堂』や『フードバンク』などの用語を解説

2021年11月5日

子ども食堂やフードバンクなど、子どもへの生活支援、生活困窮家庭へのサポートの動きが最近民間レベルで広がっています。それに伴い、関連用語も増えました。

ここでは、そんな食事・食料を中心とした支援活動を示す言葉を解説します。

※写真はイメージです(ACフォトより)

子ども食堂

子ども食堂とは、無料ないし安価に、食事や団らんを、その地域周辺の子供や親に対して提供する活動のことです。食材は周辺住民の寄付や後述のフードバンクなどで賄います。

子ども食堂は、家で一人でご飯を食べるいわゆる『孤食』を強いられている子供や、外国から日本に移ってきて、言葉の壁などで生活しにくさを感じている子供などが、気軽に足を運べる居場所としての役割を果たしています。温かい手作りの食事やそれを介した人との団らん、そばにあると実感できる地域コミュニティは、子供の健全な成長に必要ですが、その役割の一旦を子ども食堂が担います。

子どもへの学習支援を併せて行うところもあります。

この動きを受けて、厚生労働省も子ども食堂の応援企画を立ち上げたり(下のリンク)、『子ども食堂における衛生管理のポイント』などの資料を整備、公開しました。

厚生労働省『子ども食堂の応援企画』

山梨県での子ども食堂の状況

山梨県は、令和2年7月時点での子ども食堂の実態調査を公開しました。

子ども食堂等実態調査の結果について

この結果によると、県内の子ども食堂として30箇所あることが明らかとなり、うち詳細の公表の承諾を得られた24箇所について、その所在地や活動形態は以下でした。

子ども食堂の数市町村名
10カ所甲府市
3カ所山梨市
2カ所都留市、南アルプス市、北杜市、笛吹市、中央市
1カ所富士吉田市、韮崎市、甲斐市、上野原市、富士川町、富士河口湖町
その他1カ所(広域的に活動)
出典:子ども食堂等実態調査の結果について https://www.pref.yamanashi.jp/release/kodomo-fukushi/0207/200730.html

形態としては、独自の活動場所を持っていると回答したのは13カ所、公的施設や民間施設の一部で活動していると回答したのは16カ所でした。

食事以外に、『調理体験』を提供しているのは13カ所、『学習支援』を提供しているのは14カ所、『遊び場』を提供しているのは8カ所ありました。

公表の許諾が得られた子ども食堂の名称や施設詳細は以下からご覧いただけます。

出典:山梨県内の子ども食堂の状況 (令和2年7月7日現在)

フードバンクとは?

フードバンクとは、品質に問題がないのに廃棄される予定の食品を、企業や個人により寄付として受け付け、生活困窮者などに無料で配給する団体のことです。

廃棄理由は、余剰在庫、小さな包装の傷、印字ミスなどで、企業からの寄付が主となっています。

フードバンクは1960年代にアメリカで生まれました。地元スーパーの廃棄予定の食品が寄付されるようになり、教会で備蓄され、生活困窮者に配給されるようになりました。その仕組みにフードバンクという名が冠せられると、その動きはアメリカ全土、ヨーロッパ、アジア、アフリカと広がりました。

2019年の時点で、日本国内では116のフードバンク団体が活動しています(農林水産省「フードバンク実態調査事業」)。

農林水産省「フードバンク実態調査事業」

貧困世帯の実態

認定NPO法人フードバンク山梨が県内保育所と認定こども園を対象に行った調査によると、県内25%の園が『貧困世帯で育てられていると思われる園児が在園する』と答えています(2018年4月13日付け山梨日日新聞)。保育士が「貧困世帯で育てられていると思った」理由には、「衣類の汚れ」「子どもの行動」「支払いの未納」などの回答がありました。

また、保育士に対して行われた『貧困世帯で育てられていると思われる園児に、十分な対応ができているか?』というアンケートでは、8割以上の保育士が『十分なのか分からない』ないし『十分ではない』と答えています。

これらの調査は2018年のものなので、コロナを経て、現在はもっと深刻な状況になっている可能性が高いです。

「子どもの貧困率」は13.5%(2018年データ。2019年国民生活基礎調査による)。子どもの7人に1人が貧困状態にあります。

貧困は相当な困難が生じない限り表に出にくいとも言われ、一方で現場で子育てに関わる職員側も家庭の貧困問題にどこまで立ち入ればいいか戸惑っているようです。

このような状況について国や自治体、関係機関は、早急に情報を共有し、必要な政策を整備する必要があります。また現場では、貧困家庭に寄り添い、具体的に困っていることを聞き出して、必要な支援制度や育児に関する情報を提供する、などの対応が求められます。

フードドライブ

フードドライブとは、家庭で余った食べ物を所定の場所に持ち寄り、福祉団体やフードバンク、地域活動団体などへ寄付し、必要とする方へ配布する仕組みのことです。

持ち寄る場所はスーパーや行政、自治体、学校などが主催する催しやフェスなどです。最近は、店頭などにフードドライブボックス、フードドライブコーナーを設置するケースも増えています。

フードドライブが増えると、食品ロスが減り、さらに地域の生活インフラの一つとしての役割を果たすようになると言われています。

フードドライブの実際の取り組みは、たとえば江東区の以下のページが分かりやすいです。

江東区『フードドライブにご協力ください』

フードアプリケーション

フードアプリケーションとは、食品や生活用品の寄付と必要な方への配布を行う活動のことで、甲府市が進めています。

家庭や会社で余った食品や生活用品を寄付で集め、甲府市や福祉団体を通じて、それを必要とする市内の方に渡します。具体的には、お米やパスタやインスタント麺、レトルト加工品、乾麺、お菓子、調味料、ジュース、石けん、洗剤、シャンプー、トイレットペーパー、タオル、生理用品などを受け付け、甲府市がとりまとめています。

フードバンク
甲府市『フードアプリケーション』より転載
甲府市『フードアプリケーション』

フードサプライとは?

フードサプライチェーンは食品ロスなどを防ぐために、食品製造から消費者の消費行動まで企業をまたいで、その量やニーズを把握する概念のことです。

食料が生産、収穫され、それが運ばれて加工され、流通に乗って消費者の手元に届く。その生産から消費までを鎖(チェーン)に例えて、「フードサプライチェーン」と呼びます。

フードサプライチェーンは本来、以下に生産者や企業が効率的に利益率を高く事業を行うかという視点から用いられてきた用語ですが、近年はいかに「フードロス」を減らすか、企業側や消費者側がいかに健全で持続的な、また環境負荷を減らして食品流通を行うかという視点から、この言葉に向き合うようになりました。

以上、『子ども食堂』や『フードバンク』など食料支援にまるわる用語解説でした。

国や自治体もフードバンク、子ども食堂等が活用できる支援を整備しています。地域のコミュニティを活かした民間レベルの食糧支援、生活支援は今後より規模の大きな活動になっていくと思われます。

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