ユニセフが2020年に発表したレポートカード16では、日本の子どもの「精神的幸福度」が世界ワースト2位でした。具体的にどのような指標がワースト2位だったのでしょうか?
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レポートカード16とは?その結果は?
レポートカードとは、ユニセフが先進国の子どもの状況を比較分析した報告書で一年半ごとに発行されます。レポートカードとは「通信簿」の意味。子どもを取り巻く状況が良いか?悪いか?その視点から国に対してつけられる成績のようなもの。
レポートカード16が2020年に、レポートカード17が2022年に発表されましたが、毎回同じ指標が評価されているわけではありません。
レポートカード17は、緑地、道路の安全、農薬、大気汚染など環境面から評価した子どもの幸福度。「子どもの世界」「子どもを取り巻く世界」「より大きな世界」に分けて評価されました。日本は総合順位13位。大気汚染により子どもの健康への影響の少なさでは、世界2位にランクインしています。日本が環境汚染、大気汚染に長年取り組んできた結果でしょう。
一方、レポートカード16は、子どもの心身の健康や生活満足度、生活水準、学力など、子どもの生活状況が比較、分析されました。順位は以下のとおりでした。ちなみに、日本の総合順位は38カ国の中で20位。
・「精神的幸福度」:37位(生活満足度が高い子どもの割合、自殺率)
・「身体的健康」:1位(子どもの死亡率、過体重・肥満の子どもの割合)
・「スキル」:27位(読解力・数学分野の学力、社会的スキルなど)
ユニセフ報告書「レポートカード16」発表 先進国の子どもの幸福度をランキング(https://www.unicef.or.jp/news/2020/0196.html)
ニュースでも大きく取り上げられたのは、日本は「精神的幸福度」が38カ国中37位、ワースト2位だったこと。精神的幸福度は「生活満足度が高い子どもの割合」や「子どもの自殺率」が評価根拠となったわけですが、具体的に各項目のランキング結果を見ていきましょう。
38カ国中「精神的幸福度」がワースト2位。「15~19歳の自殺率」がワースト12位
精神的幸福度は2つの指標、「生活満足度が高い15歳の割合」と「15~19歳の自殺率」から算出されました。「生活満足度が高い15歳の割合」は、最近の生活全般にどれくらい満足しているかという質問に対して、0~10のうち「6」以上を選んだ生徒の割合から得られたデータです。2018年に行われました。そのため、レポートカード16には新型コロナウイルス感染症の影響は含まれていません。
結果は以下でした。
つまり、『子どもの生活満足度は先進国の中で日本は非常に低く』、『自殺率が高い』という結果になりました。
なぜワースト2位
同じくレポートカード16の中で、Bullying frequency and life satisfaction of 15-year-olds(15歳の子どもの頻繁ないじめと生活満足度)という調査結果が報告されましたが、そこでも日本はワースト2位でした。
「いじめられた経験が頻繁にない子どもの生活満足度」がそもそも日本では低いので、相対的に「いじめられた経験が頻繁にある子どもの生活満足度」が低下したと考えるのが自然ですが、それでも他国と同様に、日本の子どもたちにとっても、いじめの経験が生活満足度に大きな負の影響を与えていることが明らかになりました。
一方、「15~19歳の自殺率」の高さについては、いじめや子どものうつが理由の一部と専門家は指摘します。学校生活や家庭環境にその原因があるのでしょうか。大きく考えると、日本の子どものうつが日本社会が抱える問題(家庭や労働などの問題)と密接に結びついているかもしれません。なぜそのような状況に陥っているのか?なぜ子どもの自殺やうつが多いのか?その状況を把握し、日本国民全体が意識を共有する必要があります。正しく理解し、正しい対策を行う必要に迫られています。
文化や国民性の違いもあるため、国同士の子どもの状況を比較するのは難しい部分もあるかと思いますが、少なくとも、日本の子どもたちは世界の先進国の中で、精神的な幸福がしっかり満たされていない姿が浮き彫りになりました。