『未来の教室』、『個別最適化』、『エドテック』のついて

2021年3月5日

未来の教室とは

『未来の教室』とは、EdTech、個別最適化、文理融合(STEAM)、ICT環境整備、社会とシームレスな学校作りなどを通して、次世代の効率的な知識習得や創造的な課題発見とその解決能力を育成する教育プログラムです。

教育の場は学校(文部科学省)ですが、この「未来の教室」は経済産業省が進める国の事業。文部科学省と協力しながら、経済産業省が主体で進めるところがミソです。

未来の教室はEdTech、STEAM化などさまざまな取組みを通して実現していく
未来の教室は経済産業省の事業

出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kousou/2020/dai3/siryou6.pdf) 

個別最適化、STEAM、EdTech〜学年に関係なく、AIが学習を管理するようになる

『未来の教室』は、EdTech、個別最適化、文理融合(STEAM)などを通して実現しますが、これらはいったいどのようなものでしょうか?それぞれの定義は違うものの、『学年に関係なく、AIが学習を管理するようになる』という目的があります。

個別最適化とは

個別最適化は一連のICT活用による学校教育の見直しの中でも、その根幹となるものです。

『同一年齢・同一内容』の一斉指導が当たり前だった日本の学校教育は、学習到達度で勉強内容を個別に最適にする『修得主義』に変わるかもしれません。

得意科目や興味がそれぞれ違う生徒にこれまでは画一的に教育・授業を行ってきました。しかし、ICTの活用で教員の業務管理効率化が見込め、さらに生徒ひとりひとりの学習の進捗や得意不得意をAIできめ細かく管理、把握できるようになるため、ICTの整備により、個別最適化された学習・教育の提供が可能となり、同一年齢、同一学年がなくなるかもしれない、と言われています。

「学びの個別最適化」は、誰一人取り残さない・留め置かない学習環境を実現し、すべての子どもの学習権を保障できると前向きに考える専門家と、留年・同い年の友達と修得学年が違うなど子どもの自己否定感などを産むなど義務教育の段階では導入は難しいと考える専門家がいます。『個別最適化』『修得主義』を学校教育に取り入れるべきかどうか、取り入れるとしたらどのように段階的に取り入れていくか、その検討がすでに教育関係者間で始まっています。

以下もご参考ください。

文理融合(STEAM)、STEAM化とは

たとえば、自動運転を社会で実現するには、AIの技術(確率・統計、プログラミングスキル、漸化式、乱数などの理系知識)と社会に適応するための技術(法整備、公共整備、啓発などの文系知識)が必要になります。ところが、今の日本の学校では、それぞれの職業が理系、文系というくくりで分けられがちで、教育内容がお互いに断絶しています。プロフェッションとしてのスキルの高さは当然必要ですが、横断的な知識の素養をバックグランドとして持つことは社会問題を解決したり、自分の可能性に気付く上で必要と指摘されます。

STEAM(スティーム)化、STEAM教育とは、 Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Arts(人文、教養、リベラルアーツ)、Mathematics(数学)を統合して学習する教育体系です。横断的に知識やスキルを持つよう教育し、個々の可能性(自分で学び自分で理解できる力)を育てたり、社会問題に気づいて解決する人材を育てる狙いがあります。

国内でSTEAM教育は一部の教育機関で始まったばかりですが、海外ではアメリカ、ヨーロッパ、シンガポール、中国などでSTEAM化が進んでいます。

たとえば、国防費とほぼ同じ国家予算を教育関連費に割り当てるシンガポールでは、すでに2014年に中学でのSTEMプログラムの提供する組織が立ち上がり、博士号、修士号を持つ講師がSTEAM教育に携わります。

中国では、教育ロボットやソフトを使って、遊びの延長線で社会システムやプログラミングが学べるSTEAM教育が発展しています。

エドテック(EdTech)とは

EdTech(エドテック)とは、Education+Technologyの頭をつなげた言葉で、教育現場がテクノロジーにより変革が起こることを指します。

未来の教室のprojectやその実現のための個々の取組み(「学びの個別最適化」や「STEAM化」)において、「エドテック(EdTech)」は肝となる施策です。

エドテックが求められるようになった背景〜時代とともに変わる教育

昨今、3DプリンターやVR(バーチャル リアリティー)、AR(拡張現実)などが身近になりました。また、学生でも、ユーチューブで制作物を発信したり、英語教材で英会話を習得する人もいます。ICT(情報通信技術)はどんどん生活に身近になり、若者に学びの機会や目標、将来の可能性を与える時代です。

しかし、これらICTの習得の場は学校ではなく、家庭での個々の時間に委ねられている状態です。そのツールを利用できるかどうか自体が格差を生んでいると言えるかもしれません。また、ICTにはリスク(健康面、精神面)もあるので、正しい使い方を習得することが大切です。学校はそれらを教育する場であるはずですが、実際にはICTの可能性の教育もリスクの教育も十分にカバーできていないのが現状です。

その理由には、技術の種類が多過ぎて追いつかない、学校に整備されているIT、ICTツールが古い、先進技術の習得機会をそもそも教員が与えられない、全生徒に対して画一的な授業をしている、教室での授業という形式では限界がある、などさまざまですが、根本的には従来の教育基盤では対応できない課題があることが指摘されるようになりました。

国が示す具体的な問題、課題は以下です。

教育現場が抱える課題

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H29FY/000204.pdf)

このような背景から、国は「エドテック」を進めています。

エドテックの具体例な内容は?

それではエドテックとは具体的にどういったものでしょうか?経済産業省のHPで具体的なエドテックの取り組み内容が公開されています。

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H29FY/000204.pdf)

先ほど挙げたVRやAR、3Dプリンタなどの先進技術を授業に応用する生徒の授業内容をAIを用いて個別最適化するなどがあります。また、オンラインサービスを用いて自宅学習や遠隔授業を行い学習機会を拡大することなどもエドテックの取り組みの一つです。

教師の面からは、学習管理業務のシステム自動化出欠把握・採点業務を自動化などが挙げられます。

日本のエドテックの進捗と海外の状況

アメリカ、中国、ヨーロッパではEdTechが進んでおり、日本のEdTechは遅れていると言われています。たとえば、学校での教育用コンピューターの整備は日本では今始まったばかりですが、米国より7年以上遅れています。

経済産業省で公開されている資料でも、アメリカ、中国、英国と比べ、日本のエドテック導入状況は遅れているのが分かります。

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H29FY/000204.pdf)

とくに遅れているのが、生徒が使う教育用PCの整備オンライン教材の活用です。また、(教員側の)授業報告書や連絡事項のオンライン管理サーバーでのファイル共有・クラウド化が遅れています。

以上、「未来の教室」と「エドテック」についてでした。

今後10年で(2030年ごろまで)、日本の教育現場は大きく変わりそうです。最新のITテクノロジーやICTが導入され、教育の効率化が図られ、生徒の学びの質が向上します。海外の動向も見つつ、日本の子供たちに合った新しい教育の形ができあがっていくようです。

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