ギガスクール・GIGAスクールとは?

2020年12月21日

今やPC端末は鉛筆やノートと同じで、子供たちの学びの場そのものとなりつつあります。

そんな中、国は令和の時代の学校の「スタンダード」として、児童・生徒全員に高速大容量通信につながる端末を1人1台整備する計画を進めています。すでに予算が盛り込まれていますので、近い将来実現します。

ギガスクール(GIGAスクール)構想とは?

ギガスクール(GIGAスクール)構想とは、義務教育の全ての子供に一人1台のPC環境を実現し、デジタル教科書などのデジタルコンテンツを教育に用いる学校ICT環境を整備する5カ年計画(2019〜2024年)のことです。それにより、子供それぞれの個性に合わせたきめの細かい教育と教員の働き方改革を実現します。

ギガスクール構想の概要とロードマップは以下です(文部科学省HPより)

GIGAスクールの概要(出典:文部科学省HP「GIGAスクール実現推進本部について」)
GIGAスクールのロードマップ(出典:文部科学省HP「GIGAスクール実現推進本部について」)

そもそもICTって?

ICTとはInformation and Communication Technology、情報通信技術の略です。

IT(Information Technology)と混同されがちですが、ITと違う点は、ICTがcommunicationである点です。つまり、ITは純粋に情報処理などの技術を指すのに対し、ICTはラインやアマゾン、スマホのアプリなど、ひと同士がやりとりするコミュニケーションの場としての、いわば『気持ちの交換』に関わる技術を指します。

GIGAスクールが目指すもの

このGIGAスクールは、教科の得意不得意や興味、性格がみな違う子供たち一人ひとりが日々学んでいく上で、よりきめの細かい進捗管理や成績管理、授業準備がしやすいようにする狙いがあるといいます。また昨今、その負担軽減が求められている学校教員の働き方改革にもつなげます。

すなわち、情報通信の最新技術を活かした学習ツールを導入し、また校務のクラウド化できめの細かい教育を実現するのがGIGAスクールの目的です。

個性の違う子供たちを取り残すことなく、それぞれの個性に向き合い最適化された教育内容を実現させること、また、地域によらず全国の校舎でそのような教育が公平かつ持続的に提供される、ということになるようです。

そもそもなぜGIGAスクールが必要?〜その背景とは

現在、ITに関わる仕事でない人でも、PCやスマホを使って仕事をしている人が多くいます。また、youtubeやオンライン教材などネットワーク経由で得られる情報が学習や生活の一部となりつつあります。ICTは広く生活に根付き、これからますます加速していきます。

そのため、これからの時代を生きる子供たちに、教育としてそのようなICTの活用やリスク管理を習得してもらうことは有意義ですが、そもそも学ぶ場である校舎にICT環境はまだほとんど整備されていません。海外の状況と比べても日本はヨーロッパやアメリカと比べ5年も10年も遅れていると指摘されています。

また、自治体間の格差が大きいことも、地域による教育格差につながりかねないということで問題視いされています。

そのような背景もあり、国は全国一律のICT環境の整備を重要課題と位置づけ、一定の予算の下、GIGAスクールの整備を進めているのです。

ICT 環境は目的ではなく手段にすぎない。

ICT 環境は目的と捉えられがちです。ICT環境さえ整えば、海外に遅れをとらず、日本の子供たちの教育や教員の教育活動に情報通信技術を活用できる。そう考えがちですが、あくまでICT環境は鉛筆やノートと同じツールに過ぎません。教員のICTの理解も高める仕組みがなければ、授業で子供たちに教育することは難しいし、子供たちの個性や創造性を育む教育の工夫がなければICT環境の活用は難しいでしょう。

College Den Hulster中学校の事例

オランダのCollege Den Hulster中学校では、かつてiPadを授業で活用しようと購入しましたが、教員からの理解が得られずに授業で使用される頻度が減っていきました。これはiPadを導入すれば授業でICTは進むだろうと考え、手段は導入したはいいものの、目的が明確でなかったためにICT教育につながらなかったケースといえるかもしれません。

一方、この学校のある授業で、数学教員がRaspberry pi(ラズベリーパイ)という小型コンピュータを使用し、こちらは持続的なICT授業につながっているといいます(出典:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2016/11/07/1378984_7.pdf)。

ラズベリーパイとはヨーロッパで販売されている学習用コンピュータ(ポケットコンピュータ、2012 年から発売)で、一台4,000円程度。教育トイゆえ安価でもその可能性は無限大で、プログラムと機器への接続次第でホームページ、音楽プレイヤーやゲーム機、家電コントローラー、ロボットを作成することができます。近年、ラズベリーパイは産業界でも注目され、企業ネットワークや生産工場ラインの監視モニタリングとしても活用されるようになっています。

そんなラズベリーパイをその教員は生徒になじみやすい課題を与えることで、ICTを肌感覚で理解・習得できるように工夫しています。文部科学省の視察時には、生徒が実際に、自己紹介のホームページを作成するためにラズベリーパイで個別作業を行っていたとか。

諸外国におけるデジタル教科書・教材の活用について

GIGAスクールにお金を出すのは国ですが、進めるのは現場の教員や学校。でも、必ずしも教員がICTに精通しているとは限らず、これまでに聞いたこともない新しい言葉のオンパレードに戸惑っている教員、学校関係者の方も多いかと思います。またたとえICTに精通していたとしても、生徒にうまく活用してもらうには別の知恵が必要かもしれません。

答えがあるわけではありませんが、大事なのは言葉の定義よりも、実際に何が行われているか。失敗と成功から学べることは多いでしょう。

ここでは、文部科学省がまとめた以下の、海外でのデジタル教科書・教材の活用事例をご紹介します。教育現場に携わる方にはお役立てください。

甲府市でのギガスクール構想の推進状況

文部科学省は、GIGAスクール構想の実現に向けた調達等に関する状況について、8月末時点で機器の納品が2年度内に完了する自治体は99.6%に達すると報告しています。「1人1台情報端末となるが、その後のことはわからない」「主体的・対話的で深い学びの授業が実現できるといわれているが、急に出てきた話ですっきりしない」など歓迎しない意見も出ているようですが、その反面、すでに子どもの学びがICTで大きく変容している自治体もあるようです。つまり、ギガスクール、ICTの学びの整備の進捗状況は自治体により差が出ています。

まずは授業外の活動からICT活用を始めている自治体もあり、教師の情報端末で子どもの情報を一括して見ることのできる「ダッシュボード」機能で「心の天気」を活用しているとのことです。子どもは登校したら「心の天気」アプリを開き、「晴れ、曇り、雨、雷」のボタンから一つを選ぶという簡単な操作ですが、すべての子どもたちが抵抗なく入力しているそうです。

「心の天気」が、教師と子どものコミュニケーションを生み出すきっかけとなり、学校内では教師同士の指導について話し合いか積極的にできるようになっているそうで、まさにICTの理想的な導入例のひとつでしょう。

そんな中、甲府市での「GIGAスクール構想の推進についての質問」が先日(2020年12月3日)、甲府市議会で廣瀬議員により行われ、甲府市長や甲府市担当部署から回答がありました(以下のリンクで動画が閲覧できます)。甲府市のギガスクール導入の最新状況を知ることができます。

  • 17:33からGIGAスクール構想の推進についての質問のための背景
  • 22:48から廣瀬議員から甲府市への質問

この質疑応答によると、甲府市ではICTを活用した学びをICTコンサルタントなどを専門的人材を活用しながら、来年度からの一人一台端末の本格的な運用に備え、準備を進めているそうです。文部科学省が公開した各教科でのICTの効果的活用のノウハウ集を参考にしてICT活用事例の積み上げを進めていく予定で、さまざま学びの場面で活用できるテクノロジーとして注目されているEdTech(エドテック、学校や塾など教育・学習の現場で活用されるソフトやアプリ、オンライン学習など)についても積極的な導入を進めているとのことです。

また、市内の教員がICTツールを実際に操作・評価し、その結果、甲府市として導入OS(ブラウザ?)としてGoogle Chromeを決定。一人一台端末実現に向け、スケールメリットのメリットなどのため県レベルでの共同調達に参加することを決め、業者が決定、1万2千台の端末の取得議案を提出済みとのことです。

一人一台端末と合わせ、校内のほぼ全域に高速大容量の通信ネットワークが行く渡るよう整備も進めています。

ギガスクールの目標でもあるICTの活用による「個別最適化された学び」。その結果、「同一年齢・同一内容」を当たり前としてきた学校教育が変わることになりそうです。

以上、「ギガスクール・GIGAスクールとは?」でした。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう